本研究では、近藤栄蔵が唱えた「プロレタリア雄弁」のレトリックとしての特徴及びその歴史的・政治的背景の分析・考察を行なった。日本の近代レトリック史研究はこれまでその多くが明治期に関するものであり、大正・昭和初期は近代日本のレトリック史におけるブラインドスポットであった。大正・昭和初期においても、確固たる政治レトリックの実践がその時代に存在したことを証明した本研究の学術的意義は高い。加えて、日本の文脈における無産階級による雄弁、またマルクス主義・階級闘争とレトリックの接点についてはこれまでほとんど論じられておらず、日本のレトリックに関する未着手の課題に挑んだという意味でも、本研究は意義深い。
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