本研究における第一の成果は、文学・言語における「風景」(landscape)という概念が、近代的な出来事であることの確認である。近代的と判断する根拠は、それが線遠近法に基礎づけられた絵画的概念に由来することにある。近代西欧における風景画の登場を基礎づけた遠近法、その文学への適用が「言語風景」(verbal landscape)である。第二の成果は、遠近法が活版印刷の進展とも密接な理論的・実践的関係を有していたという点で、遠近法と活版印刷との交点が近代散文の成立として明確化されたことである。その結果、風景画と言語風景の共通の基盤を「遠近法的なるもの」すなわち「視点」であると確認することができた。
|