研究課題/領域番号 |
21K00468
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
平塚 順良 広島修道大学, 経済科学部, 准教授 (40632807)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 大越史記全書 / 大越史略 / 欽定越史通鑑綱目 / 呉仕連 / 范公著 / 引田利章 / ベトナム漢文学 / 漢文化圏 |
研究実績の概要 |
2021年度は,コロナウイルスの影響により,ベトナムへ渡航しての資料調査を断念した。第1の研究計画であるベトナムでの資料調査を遂行できない場合でも,別途で研究を進められるよう第2の研究計画を準備しておいた。第2の研究計画は,ベトナムの重要な史書である『大越史記全書』に注を施しながら和訳する作業を続け,その中から問題点を見つけ論文を書くものである。 その成果として①「訳注大越史記全書(1)巻首」(『経済科学研究』25(1),広島修道大学ひろしま未来協創センター,2021年9月,pp79-95)と②「訳注大越史記全書(2)巻首」(『経済科学研究』25(2),広島修道大学ひろしま未来協創センター,2022年2月,pp73-91)を発表した。この①②によって『大越史記全書』に附されている序文・凡例・目録の訳注を完了した。『大越史記全書』は,ベトナムの歴史を知る上で重要な史書であるにも拘わらず,これまで和訳が発表されていなかった。『大越史記全書』を正確に読解し和訳を作成することは,ベトナム史やベトナム漢文学を研究する上での重要な基盤となり,そのベトナム研究に対する寄与は大きいと言える。また日本・ベトナム・朝鮮・中国を包括する東アジア漢文学の中に,ベトナム漢文学を積極的に組み込むという意味でも,『大越史記全書』の訳注を発表することは重要である。さらに『大越史記全書』の和訳は,研究成果を一般社会に還元することにもなり,有意義である。 訳注を続ける中で,小さな発見は数多くあり,それは注の中で指摘した。しかし,論文につながるような大きな問題を見出すことは,2021年度にはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1の計画であるベトナムへ渡航しての資料調査は,コロナウイルスの影響により断念した。しかし事前に準備をしておいた第2の計画である『大越史記全書』の訳注へ研究方針を切り替え,順調に訳注作業を進めた。2021年度は,『大越史記全書』本紀巻四まで訳注を進めた。その中から『大越史記全書』巻首の部分について訳注を雑誌に発表した。「訳注大越史記全書(1)巻首」(『経済科学研究』25(1),広島修道大学ひろしま未来協創センター,2021年9月,pp79-95)と「訳注大越史記全書(2)巻首」(『経済科学研究』25(2),広島修道大学ひろしま未来協創センター,2022年2月,pp73-91)である。訳注の成果がどの段階で論文として結実するかは,まだ見通しが立たないが,論文の基礎となる訳注作業は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
もしも2022年度中にコロナウイルスの影響が収束し,ベトナムへ渡航が可能となった場合は、資料調査へ赴き,新資料を用いて論文を執筆する。コロナウイルスの影響により,ベトナムへ渡航して資料調査をおこなうことが困難な期間は,『大越史記全書』の訳注作業を継続し,雑誌へ順次訳注を発表する。2022年度は,「訳注大越史記全書(3)越鑑通考総論」を『経済科学研究』26(1),広島修道大学ひろしま未来協創センター,2022年9月へ投稿予定であり,また「訳注大越史記全書(4)鴻厖氏紀・蜀紀」を『経済科学研究』26(2),広島修道大学ひろしま未来協創センター,2023年2月へ投稿予定である。『大越史記全書』の訳注を進める中で何か発見があれば,それを論文としてまとめ発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は,ベトナムで資料調査をおこなうための旅費として200,000円を計上していたが,コロナウイルスの影響で渡航できなかった。そこで旅費として計上していた200,000円のほとんどを物品費として使用し,必要な資料などを購入した。残額は34,685円であり,次年度にベトナムへ渡航できるようならば,その旅費として使用したい。
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