研究課題/領域番号 |
21K00469
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
林 信蔵 福岡大学, 人文学部, 教授 (20807911)
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研究分担者 |
中村 翠 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 准教授 (00706301)
成田 麗奈 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 研究員 (30610282) [辞退]
川上 啓太郎 上野学園大学短期大学部, 音楽科, 講師(移行) (40978087)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オペラ演出 / ローカルな真実 / 紋中紋 / 予言 / ライト・モチーフ / パストラーレ / 円環二部形式 / ソナタ形式 |
研究実績の概要 |
2023年度における研究では、フランスの小説家エミール・ゾラと作曲家アルフレッド・ブリュノーのオペラ共作がもたらした様々な帰結についてより具体的な論点から共同研究班のメンバーがアプローチをし、それぞれが研究成果を残すべく研究を進めた。 研究代表者、林 信蔵は、オペラ共作に関して、比較芸術論的、理論的側面から研究を行い、ジャン=ジャック・ナティエらオペラ演出に関する理論的著作を参照しながら、ゾラのオペラ創造のための理論をオペラ史における音楽と台本との関係をめぐる様々な議論の積み重ねの中に位置付ける試みを行った。 フランス文学および物語論を専門とする研究分担者、中村 翠は、ゾラとブリュノーの共作の代表作《メシドール》の第3幕第1タブローのバレエ音楽とオペラ全体のフィナーレとの対応関係に関する林の先行論における指摘を受けながら、《メシドール》のバレエを「紋中紋」という概念と関連づけて理解することを提案している。その上で、バレエの場面が持つ予言的機能に関して、オペラの登場人物の属性と予言の意味とを関連付けながら考察を進め、オペラ共作以前のゾラの文学作品における預言者の果たす役割と比較するという方向からの研究を行っている。 西洋音楽史、フランス近代音楽を専門とする研究協力者(2023年5月まで研究分担者)、成田 麗奈は、中村によるオペラの登場人物の属性と予言の意味との関係についての分析と関連付けながら、ブリュノーがどのようにゾラの物語の世界観をオペラ音楽として表現するために腐心したのかについての研究を行っている。 作曲論を専門とする研究分担者、川上 啓太郎は、中村が提示した予言に関する物語論的考察を参考にしながら、オペラ全体の音楽とバレエ音楽との関係を分析し、作曲史的にブリュノーの音楽にどのような特性があるかを明らかにするための研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗としては、2023年度において、研究代表者および研究分担者・研究協力者が、それぞれの論点をより具体化させ、個々の専門的なアプローチを共同研究として統合してまとまった業績にすることができるような方向性を見出しつつあり、共同研究としては成熟しつつある。 ただし、2022年度に発生した研究代表者周辺でのやむを得ない事情に伴う研究の遅れや、研究分担者および研究協力者の事情等により、研究の業績の発表は、やや遅れた状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2024年6月に開催される日本フランス語フランス文学会におけるワークショップの公募に共同研究班として企画を応募し、採択されるにいたった。このワークショップへと向けた準備およびワークショップ当日に行われる議論を契機として、共同研究班内およびそれ以外の関連分野の研究者との議論を活性化させ、研究の方向性を明確化し、研究の進捗および業績の発表を促進させるよう尽力する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は当初2021年度から2023年度までの研究期間を予定していたが、コロナ禍をはじめとして、様々なやむを得ない理由により研究の進展が遅れている。その結果、研究の進展の合わせて行われるフランスへの出張(おおよそ60万円ほど)や国際学会への参加(おおよそ40万円)のための予算を執行することが出来なかった。今年度は、書籍や資料図書等の消耗品の購入(20万円ほど)に加えて、海外での調査、国際学会への参加を行うことでこれらの予算を執行する予定である。
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