1.本研究の一部は『三重大学国際交流センター紀要』第19(26)号に掲載した。2.本研究の成果として、2024年6月の第27回AJEヨーロッパ日本語教師会シンポジウムでの研究発表の採択を受けた。しかし、科研延長が認められなかったため、辞退した。3.追加調査および論文化するため、2024年度科研延長の手続きをしたが、延長手続きができず一部の研究成果をまとめることができなかった。4.2024年3月26日に北京の北京外国語大学で成果発表を行った。5.これまでの研究成果について福岡のHPを作成し掲載した。6.本研究の研究結果について報告する。母語に有声破裂音がない北京語母語話者は、語頭の日本語の有声破裂音は、北京語母語話者にとってL1音からの聴覚的音声距離が大きいと認識され、新しい言語音として知覚されていた。語中の範疇知覚では日本語母語話者との間に0.1%~5%未満の有意確率による差があり、有声と無声の範疇化が難しかった。一方、母語の語中に有声破裂音がある韓国語(ソウル方言)母語話者は、語中の範疇知覚では知覚上問題はなくても、語頭では全刺激音で0.1%未満の有意差があり、有声と無声の範疇化が難しかった。アクセントの位置によっても、有声と無声の範疇化の妨げになっているだろう。上海語母語話者は、語頭では北京語母語話者より有意差が多く、語中では韓国語(ソウル方言)母語話者より有意差が多く確認された。本研究の結果、L2音の知覚は、第2言語学習者によって判断される‘言語間の聴覚的音声距離’に依存し、母語に有声破裂音がない第2言語学習者の方が、日本語有声破裂音のprevoicingを早く知覚できることが示唆された。今後も破裂音の言語間の知覚上の聴覚的音声距離を探るためには、先行母音・後続母音や子音の時間長、気息性や喉頭制御、破裂後のtransition、そして、F0など韻律要素を含めた様々な音響的要因を、継続して分析していく必要がある。
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