研究実績の概要 |
本研究は、日本語母語話者が外国語音の音声を認識して処理する際にどのように言語情報を利用して処理を促進させているのか、またそれにど の程度母語の影響があるのかについて研究調査するものである。日本語母語話者の音声処理については長く日本語の同化音の知識との関連性が 指摘されてきているが、一方でMori(2019)では子音の長さが同化音の弁別に関わってくるという報告がなされている。今年度は発話実験を行い得られた音声の分析を行なった。発話実験では英語と日本語の語末子音の持続時間の差について分析を行った。。英語の発話実験では、鼻子音で終わる英単語とp,b,t,d で始まる英単語を含む英文、語末がp,b,t,dで終わる英単語と語頭が鼻子音から始まる英単語を含む英文、語頭と語末が同一の鼻子音もしくはp ,b,t,dである語を含む英文の3種類を英語母語話者に読み上げてもらい、それらを録音されていた。日本語の発話実験でも同様に、語末が「ん」で終わる単語と語頭がパ行、バ行、タ行、ダ行で始まる単語を含む日本語文、語末がパ行、 バ行、タ行、ダ行で始まる単語と語頭がナ行またはマ行から始まる単語のフレーズを含む日本語文、語頭と語末が同一の鼻子音もしくはパ行、 バ行、タ行、ダ行で始まる語を含む日本語文の3種類を日本語語母語話者に読み上げてもらい、それらを録音された。これらの録音された音声は分析され、語頭と語末の鼻子音の持続時間が測定された。それぞれの発言における各種語頭子音の持続時間の絶対値を1とした場合の語末子音の持続時間から語頭子音との相対的な値を求められた。その結果日本語母語話者の発言の比率は1:2.29、英語母語話者にそれは1:1.64であった。これらの値は統計的にも差が認められ、日本語と英語においては語末鼻子音は絶対的な差があり、この差が異言語近くに大きく影響していることが示唆された。
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