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2021 年度 実施状況報告書

通時的構文文法における構文ネットワークモデルの精緻化

研究課題

研究課題/領域番号 21K00489
研究機関同志社大学

研究代表者

菊田 千春  同志社大学, 文学部, 教授 (40278453)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード通時的構文文法 / 構文ネットワーク / 始動相構文 / 主要部内在型関係節
研究実績の概要

本研究は認知言語学の枠組みで文法的構文の成立や変化の過程を分析し、構文ネットワークモデルの理論的な検討と精緻化を目指している。以前より研究を進めていた始動相構文の研究を踏まえ、主要部内在型関係節構文についての研究に着手する予定であった。
2021年度は当初の予定通り、まず構文ネットワークに関する理論的理解を深めるための文献調査をおこなった。近年の通時的構文文法では、同種の構文間の縦の関係に加え、異なる構文間に働く類推を支える横の関係に注目が集まっている。形式主義の影響が強い構文文法ではネットワークのそれぞれの節点(node=構文)の記号的構成を精緻化することを重要視するが、現在、構文の関係性(link)をより重視し、nodeの存在そのものを疑問視する立場が生まれてきていることがわかった。このことは、本研究の方向性にも影響を与える可能性がある。nodeを重視しないモデルの方が文法を動的に捉えやすいが、現在の研究は語彙レベルのものが多く、本研究が対象とするようなスキーマ性の高い構文にも適合するかは検討の余地がある。
2021年8月には、ベルギーのアントワープ大学で開催されたInternational Conference of Construction Grammarで口頭発表(オンライン参加)を行なったが、そのために始動相構文の分析を改めて行う中で、構文の横の関係を複層的に捉える必要性に気づいた。また、特定の語彙を含む始動相構文はスキーマ性が中位であることから、上記のnodeかlinkかという問題にも貢献できると考え、現在、論考をまとめている。始動相構文も主要部内在型関係構文も、その成立や変化には構文ネットワークの影響が大きく、また、意味機能上の類似性と、表層的な形の強い類似性が変化の鍵を握るという点に共通性が伺え、主要部内在型関係節の研究にも示唆を与えるものと考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画では、2021年度は主に構文ネットワークや構文間の相互作用に関する理解を深めるための理論を中心とした文献調査、主要部内在型関係節についての文献調査に加え、コーパス調査を徐々に始める予定であった。このうち、理論関係の文献調査はかなり進めることができたが、主要部内在型関係節についての文献調査はある程度は進められたものの十分とはいえない。また、主要部内在型関係節のコーパス調査については、まだ始めることができなかった。

現在の進捗状況がやや遅れている理由は大きく2つである。
1つは、上述のように、以前より進めていた始動相構文に関する研究が、構文間の横の関係に関して、新たな知見を与える可能性があること、また、linkかnodeかという、通時的構文文法の構文ネットワークに関する理論の中で現在大きな議論となっている問題にも関わることがわかり、そちらの研究を進めたことである。
今1つは、本研究の研究費助成を申請した時点では想定していなかったが、2021年度、所属機関の学部長に就任することになり、そのため、当初、考えていた研究のためのエフォートを確保することが困難になった事が挙げられる。初めての経験でもあり、様々な業務に時間を取られ、研究を計画通りに進めることができなかった。

今後の研究の推進方策

学部長の任期は2022年度末まで続くが、昨年度の経験を踏まえ、より計画的に研究を進めていく予定である。また、始動相に関する論考については、現在執筆中であるが、これをできるだけ早期にまとめて投稿する。そして、主要部内在型関係節の研究により注力していく。
具体的には、主要部内在型関係節に関する先行研究の文献調査をさらに進めるとともに、国立国語研究所の日本語歴史コーパスまたは国文学研究資料館の電子資料(大系本データベース)を中心にデータ検索を開始する。スキーマ的構文であるため、文法タグのある前者を主に使用することになると思われるが、必要に応じて、後者も使用する。コーパス調査では、まず、文献調査の結果も参考としながら、パイロット的な検索を行い、主要部内在型関係節の関連構文として具体的にどのような構文を候補とすべきかの選定を行う。そして、それぞれについて、効果的な検索方法を検討し、実際の検索を行う予定である。検索結果の整理、分析は翌年度以降に行うことになる。

次年度使用額が生じた理由

2021年度はコロナ禍のため、国内の学会もすべてオンライン開催となり、出張費を支出することができなかった。また、当初購入を予定していたパソコンであるが、年度内での入荷の見通しが立たなかったため、翌年に購入することにした。そこで今年度は繰り越した助成金をパソコンと周辺機器の購入に充てる。また、学会については、引き続き、オンライン開催が多くなる見込みで、出張費、旅費の支出は減る可能性が高いが、その分、助成金を文献の購入などに充てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] "An Unexpected Blocking of Language Change: The Asymmetry in Japanese Inchoative Constructions."2021

    • 著者名/発表者名
      菊田 千春
    • 学会等名
      11th International Conference on Construction Grammar (ICCG11)
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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