研究課題/領域番号 |
21K00492
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
中野 陽子 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (20380298)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本語 / 意向形 / 類似性の効果 / 規則の適用 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
日本語の動詞は大きく3種類(子音語幹動詞、母音語幹動詞、不規則動詞)に分けられる。見分け方には、辞書形の語末の二拍の音韻構造(子音1、母音1、子音2、母音2)の違いを見ることがある。しかし動詞の中には、語末の二拍の音韻構造が他の種類と類似しているものがある。今年度は、子音語幹動詞とサ行変格活用動詞を比べた。子音語幹動詞の子音1、母音1、子音2のいずれかがサ行変格動詞と被っているものがある。そこで子音語幹動詞を、サ行変格活用動詞の辞書形の語末の二拍の音韻構造との類似性によって8種類に分類し、類似性に従って活用パターンが変化するのか、最も数の多い種類の動詞の活用パターンが適用されるのか調べた。 まず国立国語研究所の書き言葉コーパスで8種類に分けた子音語幹動詞とサ行変格活用動詞の分布を調べた。その結果、辞書形の子音1、母音1、子音2がすべてサ行変格動詞とは非類似の子音語幹動詞(「書く」など)が子音語幹動詞の中で最多(53.1%)であることが分かった。2つ目に多い子音語幹動詞は子音2のみサ行変格動詞と類似している動詞であった(「狩る」など 22.7%)。 先行研究ではそれぞれの語の使用頻度によっても活用形が異なる可能性が指摘されているため、実在する上記8種類の子音語幹動詞について、高頻度と低頻度6個ずつ(計12個)を選んだ。また8カテゴリーに該当する新造動詞を24個ずつ作成した。それぞれの動詞について意向形を産出する文脈を作成してインターネットを使った調査を実施した。また音韻規則を学習して適用するプログラムによる機械学習も実施した。類似性によって動詞グループの活用パターンが選択されるのか、それとも過去形形成に関する文法規則が適用されているのかと言う観点から現在分析中である。 上記以外に今年度までに複雑語の分解や語彙等の認知について調査した結果を学会や雑誌で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルス感染防止のため対面による実験ではなく、インターネット上で実施できる実験と機械学習による研究を実施した。機械学習による研究は2年目以降に実施する予定だったが、一部前倒で実施した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)日本語母語話者から意向形に関して得られたデータの分析を進め、その結果を学会発表に応募したり、学術雑誌に投稿して発表する予定である。 (2)また、日本語母語話者だけではなく、日本語学習者からもデータを収集し、第二言語としての日本語の複雑語の研究を進めたい。手法は日本語母語話者と同じ方法を用いるが、日本語の能力を調べるために日本語の能力テストを実施する。また、できれば、実験に使用している刺激のうち、内容語の親密度判断課題も併せて行う予定である。 (3)サ行変格動詞や意向形だけではなく、ほかの種類の動詞やほかの屈折形についてもデータの収集を行い、言語処理のより普遍的なメカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大予防のため対面による学会が開催されず、旅費の支出が無かったことと、対面による実験の実施を見送ったため人件費・謝金の支出が無かったことにより、次年度使用額が生じた。 旅費は学会の開催方式に合わせて使用する計画である。また、人件費・謝金は、対面による実験が可能であれば対面による実験を実施して使用する。研究の一部については、インターネット上のプログラムを利用する、またはwebを介した実験プログラムを配布し、クラウドソーシングサービスを利用しながらデータを収集することも可能であるため、状況に応じて対面以外の実験を行って使用する予定である。
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