研究課題/領域番号 |
21K00496
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上原 聡 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (20292352)
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研究分担者 |
Narrog Heiko 東北大学, 文学研究科, 教授 (40301923)
王 安 法政大学, 文学部, 准教授 (70580653)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 主観性 / 認知言語学 / 言語類型論 / 言語間差異 / 類型化 |
研究実績の概要 |
認知言語学の基本概念である、言語表現の意味は捉えであるという観点から、主観的事態把握の表現と、同じく日本語の好まれる言い回しとしての「ナル表 現」(スル表現に対する)、及び名詞指向性の基となる(出来事の)「名詞表現」との関連性(共通点及び相違点)を、対訳コーパスの日本語との対応表現の例を用いて明らかにした。 特に、主語/代名詞省略としては日本語と共通である東アジアの言語においても、当該の3種の表現群に関して、欧米語に近い表現パターンが見られることが多く、それが日本語に比して主語/代名詞省略の度合が少ない要因ともなっていることを示し、研究結果を上原(2022)の『エネルゲイア』所収の出版論文にて公開した。 また、前年度に続いて個別言語間の対応関係を示す個別表現の分析も進めた。例えば方向動詞「出る」とそのタイ語の対応表現の分析を通して、(前年度行った移動起点指示の表現(「(ーから/を)出る」)に続いて)移動着点指示の表現(「(ーに)出る」)においても、タイ語においては対応する直訳の語が使えず全く別の語に対応したり、特に「お化けが出た」のような出現を意味する用法の場合など、その出現を知覚する主体と知覚行為の表現を追加した表現に対応するなど、近似の表現間の文脈等による意味用法の体系的な対応関係を明らかにすることができつつある。 さらに、中国語学では「主観的」とされる中国語の状態形容詞(性質形容詞を基本とする重ね型の形式を持つ)に関しても分析を進め、同じく「主観的」とされる日本語の感情形容詞などとの「主観性」間の相違点について用例などから明確にすることができ、学会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、共同研究者の元へ赴いての、データを突き合わせての分析作業やディスカッション、共同執筆や共同発表の打合せが、コロナ禍の旅行、特に22年度前半は海外渡航不可の状況から不可能であったが、年度後半になって可能となり行うことができ、また不可の間も、研究代表者及び研究分担者、連携研究者が個々に分析等を進め、必要最低限の連絡や共同のための打ち合わせ をオンラインでこなし、また個々で学会等でオンラインで研究成果の発表も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
対訳コーパスなどのデータの分析を進め、多言語間の好まれる言い回しとしての対応表現を明らかにする。また、どのような 主観性表現と近似の表現として、エヴィデンシャル/証拠表現やモダリティの表現が考えられるが、それらとの異同を明らかにする。 上記の点を、対訳コーパス等の実際の言語使用のデータに基づいたものにするのに加えて、各言語の記述文法書での記述や、当該テーマの特に日本語との対照言語学的な研究論文の記述にも基づき、明らかにする。さらに、中村(2009)で提起されたIモード、Dモードの認知のモードに関わる言語表現の要素に基づき、日英語以外の言語での要素別類型を検討し、要素別に言語類型論的にIモード的になりやすいかどうかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、予定していた出張のうち見合わせた研究打合せ出張やオンライン発表となった学会があったためと、注文した物品が年度内に届かなかったため、次年度に繰り越す使用額が生じた。次年度には、出張を増やし、学会発表も対面参加する形を考えており、また注文した物品はすでに4月に届くなどしており、年度内に、研究開始当初の使用計画に基づいた、使用計画に戻ることに問題はないだろうと考えている。
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