研究課題/領域番号 |
21K00499
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内堀 朝子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70366566)
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研究分担者 |
上田 由紀子 山口大学, 人文学部, 教授 (90447194)
今西 祐介 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (80734011)
下谷 奈津子 関西学院大学, 産業研究所, 助教 (20783731)
原 大介 豊田工業大学, 工学部, 教授 (00329822)
松岡 和美 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (30327671)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 日本手話 / 文末指さし / NMM / セット形成 (Set formation) / シークエンス形成 (Form Sequence) |
研究実績の概要 |
令和3(2021)年度においては,研究計画の内,文領域に生起する文末指さしに関連するデータ収集を行った。その中で,現象としては指さしそのものではないが,文末指さしと競合する文末位置に生じたり,文末指さしと同時に現われたりする非手指表現(NMM)である,一定の頭の動き(いわゆる頷き)が生じる事実を確認した。 この頭の動き(いわゆる頷き)は,節どうしの等位接続詞としても機能する頭の動き(いわゆる頷き)と同じものと観察され,またその分布の特徴からは,CP領域に位置するものと考察される。さらに,研究計画においても関連が予想されることを記載したいわゆるリファレンシャル・シフトの領域が,上記とは別の種類の頭の動きによって接続される事実にも気付いた。また,リファレンシャル・シフト領域がそのように連続して現われ終わった位置には,上記の文末指さしと生起位置が競合する可能性のある頭の動き(いわゆる頷き)と同じものが現われる事実も観察された。 生成文法の最新の理論的枠組みであるミニマリスト・プログラムの提案(Chomsky 2021)に基づけば,関連するデータからは,NMMが接続構造を標示している句構造が,自然言語の構造構築のシステムにおいて必然的に要請されている操作である「セット形成 (Form Set)」や「シークエンス形成 (Form Sequence)」 によって作られていると考えることができる。このことは,手話言語の統語構造が普遍的な自然言語の構造構築のシステムによって構築されていることを強く示唆する。 今後さらに分析を進めていくが,上記の文末指さしと競合するNMMの分布及びその構造的特徴は,文末指さしが節の周縁領域すなわちCP領域内に生起するものであるという仮説の支持証拠につながるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3(2021)年度においては,コロナ禍による調査中止のため,研究計画の内,限定詞句領域内に現われる指さしに関して,予定した回数・内容のデータ収集を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4(2022)年度は,前年度にコロナ禍により実施できなかった限定詞句領域内の指さしに関して,調査計画を見直して取り掛かるとともに,既に行っている文領域の指さしとそれに関連するNMMの分布に関する調査をさらに進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3(2021)年度において,コロナ禍により日本手話使用者を調査協力者とするデータ収集の一部を実施することができなかったため,調査に必要な備品購入の物品費・協力者謝金・通訳者謝金・出張旅費・その他の支出が計画より少なくなったか,あるいは,全く発生しなかった。 令和4(2022)年度は当初予定に加えて,上記未実施分のデータ調査も行うために必要な費用を支出する計画である。
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