研究課題/領域番号 |
21K00501
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高橋 康徳 神戸大学, 大学教育推進機構, 准教授 (90709320)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中国語 / ベトナム語 / 広東語 / 地域類型論 / 中華文化圏 |
研究実績の概要 |
まず、中国語の離合詞がベトナム語に借用された際にその文法的特徴がどのように受容されるのかについて考察を行なった。本研究課題の開始時点で既に収集済みのデータを用いて考察を行なったところ、中国語の離合詞が有する「構成素が分割可能である」という特徴はベトナム語に借用されるとほぼ完全に失われることが判明した。また、「中国語の離合詞は目的語の後続には強い制約が働く」という特徴についてもベトナム語で考察した結果、中国語とは別種類の制約が働いておりむしろ日本語の漢語との共通点があることが判明した。これら2つの考察に基づき、中国語からベトナム語に離合詞が借用された際は「離合詞」という語彙クラスを保持せずに複合語の動詞として再解釈されたという主張を提案した。 以上の研究成果をSEALS 30(The Southeast Asian Linguistics Society)でオンライン発表し、発表を通して得られたコメントを反映させた上で論文化してJSEALS(Journal of the Southeast Asian Linguistics Society) special edition(ハワイ大学出版社)に寄稿・公刊した。 上記の離合詞の考察を着手する際に「中国語とベトナム語は文法の類型は似ていても言語研究の伝統や体系が異なるため、同じ術語が中国語とベトナム語では異なる含意を持っており単純な比較が困難だ」という課題が新たに判明した。この課題を克服するには中越2言語における「言語学の術語と基礎概念」の整理・対照が必要であるため、言語学用語の収集・対照作業に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた離合詞の借用研究は、国際学会で発表した上で最終的な結論を海外学術誌の特別号で論文として公刊できた。また、今後の考察で起きうる課題についても把握し、それらへの対処についても既に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の推進方策としては、中越2言語の言語学用語の比較について引き続き整理を行った上で、学問的な成果を上げられる部分については関連学会(国内・国外)での発表を行う。また、離合詞について広東語とベトナム語の比較を行う準備ができているのでこちらも関連学会(国内)での発表を目指す。 2023年度以降の推進方策としては、品詞体系の整理や量詞・類別詞の比較などを行う予定である。今後準備作業を本格化させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナウイルスの感染拡大が続き、国外での現地調査はおろか国内研究機関での資料収集も図書館の閲覧者制限などでほとんど行うことができなかった。また、同様の理由で研究協力者の確保や作業依頼も難航した。 2022年度の使用計画だが徐々に国内・国際学会の現地開催が再開し始めており、特に国外出張は昨今の円安状況で必要経費が当初の計画以上に高騰する見込みである。これらの価格変動に対応するために次年度使用額を有効に使いたい。
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