研究課題/領域番号 |
21K00513
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藏藤 健雄 立命館大学, 法学部, 教授 (60305175)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 形式意味論 / 総記化 / 焦点 / 例外詞 / 複数性 |
研究実績の概要 |
当初の計画では英語例外詞butに関して、(1) *Someone but me jogged.の非文法性と (2) Did anyone but me jog?の文法性の違い、および(2)の解釈の特異性について着手する予定にしていた。(2)はNo one but me jogged. として解釈されるが、どのようなメカニズムでanyoneがno oneに解釈されるのかという問題と、Yes-No疑問文でどのようにanyが認可されるのかという問題がある。これまで多くの先行研究が両問題を議論してきたが、基本的には独立した問題であり、一方が解明されれば他方も自動的に説明できるというような類のものではない。従って例外詞butの問題以前に整理すべき多くの問題が残っていると言える。 そこで、今年度は、別の角度から例外詞butの問題に取り組むことにした。von Fintel (1983 Natural Language Semantics 1) で提案されたbutの意味論に従うと、All students but John came. では John didn't come. であることがbutの適切性条件の一部となるが、All students but John gathered. では、そもそも John gathered がgatherの複数性を満たしていない。これは、管見の限りではこれまで指摘されていない。よく似た現象は日本語にも観察される。「総理だけが集まっていません」において、焦点意味論における代替集合を仮定すると、その中に「総理が集まった」が含まれなければならないが、そもそもこの表現は「集まる」の複数性を満たしていない(この観察も本研究オリジナルのものである)。今年度はわずかではあるがこれらの関連データの収集を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は勤務校教授会の役職に就いたことにより、十分な研究時間の確保が難しい状況であった。そのため、当初計画していた研究内容を十分に遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本来であれば2022年度は上記課題について論文にまとめジャーナルに投稿する予定であったが、理論的分析がまとまっていないので、まずはそれに注力する。合わせて、もう一つの課題であった音声的に空な要素が焦点要素になりうるのかという問題についても論文作成に取り掛かる。 研究計画の大幅な変更はなく、遂行上問題が生じた場合には学会/研究会のメンバーにコメントを求めることを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は本務校教授会において役職に就いたため、十分な研究時間を確保することができず、研究のための備品・図書等を購入しなかった。また、学会活動も十分に行えなかった。 2022年度は、備品・図書費として約11万円、学会・研究会が対面で開催される場合には東京出張(1泊2日:4万5千円)x2回、名古屋の研究会参加(日帰り:1万5千円)x2回を計画している。学会等が対面のみの開催の場合には、備品・図書費に充てる。
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