研究課題/領域番号 |
21K00516
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
西岡 敏 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (30389613)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 琉球語 / 危機言語 / 文芸作品 / 文法注釈 / 沖縄語 / 言語学 / 琉球歌劇 / アーカイブ |
研究実績の概要 |
本研究は主に二つのことを目的としている。一つ目は、衰退の危機に瀕している琉球諸語による文芸作品を記述言語学的な視点から正確に記録し、詳細な分析を加えることである。こちらは、琉球諸語のうち、近代沖縄語による琉球歌劇の初期作品である「親阿母(うやんま)」を採り上げ、これまで記録された諸本を比較し、それぞれの諸本の違いを明らかにするとともに、音源が残っているものについては正確な「書き起こし」を行い、それらに文法注釈を施すことで、言語学的にも有用な資料としてまとめることができた。本研究では、琉球諸語に新しい語彙項目を付け加え、また、より包括的な文法現象の解明を目指している。今回の文法注釈を付ける作業の中で、それらを部分的に実現できたと考えるが、特に、「尊敬語+使役」形式(日本語への直訳は「ナサラセル」)など、琉球諸語に特有の文法現象を文芸作品でも見ることができたのは一つの成果であった。また、宮古民謡「にんぐるま」についても背景を含め、分析することができた。 二つ目は、琉球諸語の話し手に文字記録を実際の音声として再現してもらうことで、文芸作品の音声的なアーカイブを作成することである、こちらは、地元の新聞に30年ほど前に残された琉会話集(具体的には沖縄語による短い滑稽な会話スキット)をテキストファイルとしてパソコンに入力し、「読み上げ」資料(台本)を準備、琉球語話者の方に実際に発音をしてもらう予定であった。ただし、この琉会話集は、漢字仮名交じり表記でルビが付いているものの、正確な発音が不明なところもあり、また、現在の方言話者(ネイティブ・スピーカー)にとって不自然な表現も含まれているため、論音資料を作成するためには、「読み上げ」資料(台本)に修正が必要なことも判明している。昨今のコロナ禍もあって、方言話者との確認作業が途中になっており、録音を実現するには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
映像資料や録音資料として残された琉球語の文芸作品について、その幾つかの記述言語学な記録と文法注釈(グロス)を付与する作業を進めているものの、これまでに聞き取りができない部分が多く出てきている。多くが老年層である方言話者(ネイティブ・スピーカー)に確認を行いたいところであるが、コロナ禍により臨地調査・インタビューができない状態が続いている。また、録音を予定していた琉球語の会話集は、そのままの「読み上げ原稿」(台本)では方言話者の録音が難しいことが予想され、まずは「読み上げ原稿」(台本)の修正・整理が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度と同様に、映像資料や録音資料の「書き起こし」を継続し、文法注釈を施す作業を進める。また、「書き起こし」の際の「新語リスト」を充実させ、これまでに琉球語の辞典に掲載されていなかった語彙の追加登録に努める。また、琉球語に特徴的な文法現象についても新たな発見に繋がるよう、文法注釈を行う際に注意深く分析・観察を行う。会話集そのほか、文芸作品の録音を進めることが、コロナ禍をはじめとする諸事情により課題となっているが、方言話者とできるだけ緊密に連絡を取り合い、琉球語諸方言による文芸作品の録音が円滑にできるよう鋭意取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により臨地調査が困難であっため、旅費や謝金が使用できなかった。方言話者をはじめ、調査協力者の理解を得て、必要な調査および記録を行う。
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備考 |
上記URLにおける「親阿母」の読みが「シンアボ」とあるのは間違いで、正しくは「うやんま」である。
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