研究課題/領域番号 |
21K00517
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
五十嵐 陽介 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, 教授 (00549008)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日琉祖語 / 比較言語学 / 語彙データベース / 琉球諸語 / アクセント / 分岐学 / 系統 |
研究実績の概要 |
令和4年度に電子化した72の日本語・琉球語諸方言の2300の語彙項目の一部を利用して、九州諸方言の基礎語彙データを作成した。このデータは様々な分野の研究者と協働して行う、日琉語諸方言の系統関係を明らかにすることを目的とした研究に利用される予定である。 令和4年度までに作成されたデータベース「日琉語類別語彙」の分析に主として基づいた2本の論文が学術誌に掲載された。1つは、九州諸方言の動詞活用パラダイム(上二段活用)に現れる母音に着目して、日琉祖語の母音に生じた音変化を再建し、同じ音変化を九州諸方言と琉球諸語とが共有していることを示し、九州諸方言と琉球諸語が単系統群をなすことを主張する論文である。もう1つは、琉球祖語のアクセント類を再建する論文である。日本語のアクセント類のうち2拍4類・5類の一部は琉球祖語のB類に残りはC類に対応することが知られていた。この分裂対応は日琉祖語のアクセント類を再建するために重要である。しかし2拍4類・5類に属する語(約100語)のうち、琉球祖語におけるアクセント類が確定しているのはその一部に過ぎなかった。本論文は琉球諸語におけるアクセント型の対応の検討に基づいて、75語のアクセント類を確定した。 さらに、上で述べた琉球祖語のアクセント類に関する成果に基づいて、琉球祖語と日本語との間のアクセントの特徴的な対応が日琉祖語の語形成に起因するとする新説を国内学会のワークショップで発表した。 また、琉球諸語、九州諸方言、八丈語、東日本諸方言を非中央語と位置づけ、非中央語が日琉語族の中でどのような系統的に位置づけられるかに関する発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
語彙データベースを用いて、2本の査読付き論文を学術誌に掲載することができたので、研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
私が所属する研究機関(国立国語研究所)に所属する別の研究者が主体となって構築している琉球諸語の語彙データベースと、私が構築しているデータベースを融合し、研究にとってより有益なデータベースの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、発注したデータ入力作業の費用が予想していた金額よりも小さかったためである。次年度使用額は①論文の英語校正費用、②図書購入に割り当てる予定である。
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