【最終年度の成果】日本語と琉球諸語のデータに基づく比較言語学の概説書を共著者とともに出版した。この概説書には、日本語と琉球諸語が共有する語彙とそのアクセント類のリストである「日琉語類別語彙」のデータも利用されている。日本の消滅危機言語の音声データを検索可能な形で一般に公開する「危機言語データベース」の一部をなす「語彙データベース」に、最新版の「日琉語類別語彙」を登録した。これにより、「語彙データベース」に格納された日本語・琉球諸語の語彙を、語形、同源性、意味によって統一的に検索するだけでなく、当該の語のアクセント類に関して利用者が知識を得ることが可能となった。静岡県旧安倍郡井川村を中心とする大井川上流域の方言(井川方言)の現地調査を行った。共同研究者とともに井川方言の基礎語彙調査とアクセント調査を行った。 【期間全体の成果】本プロジェクトは、同源性および意味の双方で関連付けられた、日琉諸語の比較言語学的研究を促進するための語彙データベースの構築を目的としている。この目的に達するために、研究代表者が構築してきた「日琉語類別語彙」を整備拡張し、これを、国立国語研究所が公開している「危機言語データベース」に登録した。このデータベースを用いた主要な研究成果は以下のとおりである。 ①九州諸方言の動詞に現れる母音に着目して、日琉祖語に生じた音変化を再建し、九州諸方言と琉球諸語が単系統群をなすことを主張する論文を発表した。②琉球祖語のアクセント類を再建する論文を発表した。③琉球祖語と日本語との間のアクセントの特徴的な対応が日琉祖語の語形成に起因するとする説を学会で発表した。④琉球諸語、九州諸方言、八丈語、東日本諸方言を非中央語と位置づけ、非中央語が日琉語族の中でどのような系統的に位置づけられるかに関する発表を行った。⑤比較言語学の概説書を共著者とともに出版した。
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