研究課題/領域番号 |
21K00519
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 大厚 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (00272021)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ラベリング理論 / スルーシング / 中国語 / 焦点化構文 |
研究実績の概要 |
2022年度は、中国語のスルーシング構文に関する文献調査を引き続き行い、また必要に応じてインフォーマント調査を実施することを計画していた。 中国語のスルーシング構文に生じる「是(shi)」という焦点辞と焦点として解釈される要素との間の語順が重要なので、この点について中国語統語論の歴史的変異に関する文献を調査した。また、「是(shi)」と類似すると思われる「把(ba)」や「被(bei)」についても語順の歴史的変異に関する文献を調べた。いずれも現在文献を精査中である。これまで確認した文献によると、語順の歴史的変異には音韻論上の要因が関与していることが述べられており、このことをどのようにラベリング理論と関係づけることができるのかが当面の考察対象である。 さらに、中国語における「是(shi)」が生じる焦点化構文との対比という観点から、やはり節の左方周縁部に焦点辞が現れる西アフリカ・ブルキナファソなどで話される言語の一つであるダガラ語の研究も研究助手のサポートを受けながら継続して実施した。ダガラ語ではスルーシング構文と考えられる構文に焦点辞が出現すること、焦点辞がその指定部に移動する焦点として解釈される要素との間で数の一致を起こすことなど、省略と句構造に関する理論やラベリング理論にとって示唆的な現象を確認することができた。現在は、研究助手を務めてくれたダガラ語研究者と共著論文を執筆中であり、2023年度中に学術雑誌に投稿することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、中国語のスルーシング構文に関する文献調査を引き続き行い、また必要に応じてインフォーマント調査を実施することを計画していた。 中国語のスルーシング構文に生じる「是(shi)」という焦点辞、及びそれに類似する「把(ba)」や「被(bei)」について語順の歴史的変異に関する文献調査に着手できた。 また、対比という観点から絶好の考察対象であるダガラ語について研究助手のサポートを受けながらインフォーマント調査により貴重なデータを入手できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、中国語の関連構文に主要部移動が関与しているのかどうかを検証するのにどのような統語的テストが必要かを検討し、それに基づき、文献調査では得られない中国語のデータについて、インフォーマント調査を実施する段階に入る。また、同時に中国語との対照という観点から考察しているダガラ語について共著論文を完成させ、雑誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、主に校務による多忙、コロナ禍により当初予定していた国外・国内学会の旅費が発生しなかったこと、当初RAに予定していた大学院生を都合の調整がつかずRAに採用できなかったことである。2023年度は特に国際学会での研究発表に積極的に応募し、その旅費として使用する他、学術誌に投稿しその掲載費用に充てる予定である。
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