研究課題/領域番号 |
21K00522
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長屋 尚典 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (20625727)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 言語学 / 記述言語学 / コーパス言語学 / オーストロネシア語族 / タガログ語 |
研究実績の概要 |
本研究計画は、タガログ語の 6 つの談話小辞 (e、o、a、ha、ano、diba) を取り上げ、これらが (a) どのような機能を持ち、(b) ど のような音調と結びつき、(c) どのような分布・共起関係を持つのかを明らかにする。研究方法として、(i) 大規模ウェブコーパス、(ii) 自然会話コーパス、(iii) 聞き取り調査の 3 種のデータの分析を採用し、総合的かつ多角的に分析することで記述的にも理論的にも意味のある分析を目指す。 2021年度は準備段階の 1 年であった。Sketch Engine などの大規模コーパスだけでなく、自分で構築した会話コーパスを利用してデータを収集し、研究補助者とともにデータのアノテーションを開始した。同時に、談話標識に関する理論的・通言語的研究も行った。 主な成果としては、Nagaya, Naonori. 2022. Beyond questions: Non-interrogative uses of ano ‘what’ in Tagalog. Journal of Pragmatics 190. 91-109. の執筆と出版がある。これは研究代表者が長年行ってきた会話コーパスを利用してタガログ語の疑問詞 ano 「何」がさまざまな機能を持つことに注目し、その多義性を記述したものである。この論文では、その用法として確認の談話小辞としての機能に注目し、その機能を言語類型論と理論研究、文法化研究の文脈に位置づけた。 この他にも、談話小辞 diba について 17th International Pragmatics Conference で発表したり、タガログ語の Twitter コーパスを利用して、sana all 「だったらいいのになぁ; うらやましい」の研究も発表し、方法論の点で研究を発展させようとしたりした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は準備段階の 1 年であったが、Sketch Engine などの大規模コーパスだけでなく、自分で構築した会話コーパスを利用してデータを収集し、研究補助者とともにデータのアノテーションを開始した。同時に、談話標識に関する理論的・通言語的研究も行った。Journal of Pragmatics で談話小辞の論文を発表し、 17th International Pragmatics Conference などの国際学会でも発表した。おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2022 年度は継続して大規 模コーパスの分析、自然会話コーパスの分析を進めるとともに、新型コロナウイルス感染症に留意しつつフィールド調査を実施する予定である。これらの研究を通して記述的な 論文を執筆したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画ではフィールド調査を研究の主軸とし、国際学会で発表することでフィードバックを得ることを目標の一つにしている。しかし、2021年度は新型コロナウイルス感染症のためにフィリピン共和国を含む海外に行くことはできなかった。このため次年度使用額が生じた。2022年度は海外渡航が可能そうな趨勢であるため、次年度使用額についてはフィールド調査ならびに国際学会のために使用する予定である。
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