研究課題/領域番号 |
21K00523
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
南 潤珍 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (30316830)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 現代韓国語 / 小説コーパス / 言語変化 / 文法化 / 語彙使用 |
研究実績の概要 |
2021年度には以下の作業を行った。 ①20世紀韓国語の小説コーパスの整備:「世宗コーパス」の小説テクストを年代別・作家別に分類し、欠けている年代の資料を補充するとともに多くの作家の作品が含まれるよう、原文テクストを追加・補充し、小説コーパスの規模を165名の作家の1109作品にまで増やした。そして、各作品のテクストとしての性格をより明確にするために、地の文と会話文を区別する作用を行っている。 ②20世紀韓国語の変化及びコーパス分析方法に関する先行研究の調査を行い、a.代名詞など代用語の使用、b.2つの否定形式の使い分けc.可能・不可能の表現の使用に関する先行研究をまとめた。このうち、代名詞および人称使用について、コーパスから頻度を抽出したうえ、その頻度の意味の解釈を試みた。 ③単純な頻度から意味ある情報を引き出し、言語学的に妥当な解釈に導く方法を模索するコーパス言語学の成果を調べ、本研究に適した方法論を見つけるため、参照コーパスとサブコーパスの比較に基づく核心クラスター分析、核心カテゴリー分析についての先行研究を調べた。 ④小説家の言語環境・韓国社会の言語事情の変化を調査し、作家の出生年代・学歴・方言など小説の言語使用に影響すると予想される作家の属性を調査し、その情報を小説コーパスと紐づけた。作家の言語使用に影響する要素は作家個人の環境だけでなく、社会の変化も密接に関連するという前提で、言語政策や教育制度の変化、出版事情の推移((翻訳本出版など)、マスコミの普及のような社会変動の様子を調べる必要があるため、20世紀の韓国の教育・出版・放送に関する1次資料の調査に着手した。 ⑤小説コーパス全体の変化を概観するために、言語使用の推移を10年ごとに分けて②の結果として選定された言語項目の使用頻度を調査に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響で韓国渡航が実現できず、韓国の文献の収集、資料の1次調査を行うことができなかった。そのため、韓国の出版・放送・教育および作家の成長過程や言語形成過程に関する1次資料の調査が計画より遅れている。 そして先行研究の調査にも思ったより時間がかかり、漢語の使用、主動文と受動文の使用頻度、文法的コロケーションと言われる文末の複語表現の使用についての研究のまとめが完了していない。 調査結果の研究発表は行ったものの、論文としてまとめるまでにはいたっていまい。 これらの点から、当初計画より少し遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、2021年度に完了できていない言語変化における先行研究のまとめ作業を完了する。そして小説コーパス全体の変化を概観するために、言語使用の推移を10年ごとに分けて、選定された言語項目の使用頻度を調査する。 2021年度に行った研究発表の内容を論文にまとめて投稿する。 新しく調査した言語項目について、コーパス調査の結果を学会で発表し、フィードバックをもらう。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で韓国渡航ができなくなるなど、旅費の支出がなかったため。
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