研究課題/領域番号 |
21K00529
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 響子 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 教授 (80235332)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 女性活躍 / インタビュー / ジェンダー規範 / ナラティブ分析 / フェミニズム |
研究実績の概要 |
真の意味での女性活躍が進まない日本社会で働く女性へのインタビューを通じて、誰もが望む形で働くことができる社会になるために、働くことに対して女性自身及が持っている規範意識の可視化という点からアプローチすることを目指して研究を進めた。本年度は、働く女性に関わる過去のインタビュー調査の概要把握、フェミニズム関係の文献調査、インタビューの立案、2件の研究発表、22件のインタビュー実施した。 学会発表では(17th International Pragmatics Conference, Winterthur, Switzerland, 2021年6月29日)、インタビューはインタビュイーとインタビュアーの相互作用性が高い言語実践であることを明らかにした。ジェンダー研究会(2021年9月7日、横浜市立大学)では、本研究の概要を紹介し意見交換の機会を得た。 インタビューの相互作用性に注目し、同種のインタビュー調査に欠けている視点である自身の体験を後輩に語り伝えるという視点を取り入れたインタビューを実施した。機縁法で22名の女性に半構造化インタビューを実施し、ライフコース選択要因と職業促進要因ならびに阻害要因について話を伺った。インタビューには女子大学生を同席させた。 今年度はインタビュー立案とデータ収集がメインとなり、分析段階には至っていない。しかし、インタビューからは興味深い実態が浮かび上がってきた。例えば、職業促進要因として、良き上司に励まされたり機会を与えてもらった経験があること、しかし、最終段階への昇進には見えない壁(ボーイズクラブ)が立ちはだかっていること、などである。同席の学生からの質問は、研究代表者が思いつかないような内容も多く、学生とインタビューイーとの相互作用も重要なデータとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前半は、インタビュー実施の準備期間とし、文献調査に充てた。準備期間を経て9月に倫理委員会にインタビュー実施の承認を得たのち、10月から3月にかけてインタビューを実施した。 実施したインタビュー調査は次の通りとなる。今年度は、22人の働く女性にインタビューを実施することができた。機縁法でインタビューイーを募ったが、多様な方からお話を伺うことができた。年齢層は、60代以上4名、50代12名、40代3名、30代3名。そのうち過去あるいは現在、管理職位に就いた経験がある方が19名、キャリアが浅いために管理職の経験がない方が2名、キャリアの途中で非正規雇用に転換した方が1名。職位は、執行役員、部長、課長、社外取締役など様々である。また、業種も、女性が多い航空業界、男性が多い建設業界を含めて多岐にわたり、資格を有する職種の方のお話を伺うことができた。16名に女子大学生が同席した。 インタビューは、約1時間から2時間の半構造化インタビューとした。インタビューは録音、録画し、内容を文字化したのち、データから削除を希望する箇所の確認依頼をインタビューイーに行った。準備の整ったデータから質的分析ソフトMAXQDAにデータを入れる作業を行った。なお、インタビューの日程と予算の都合上、文字化作業と対象者本人への確認作業が完了しているのは12名分であり、残る10名分の作業は新年度に持ち越しとなっている。 併せて、インタビューに同席した女子大学生2名(インタビュー時点で3年生)にインタビューから学んだこと、感じたことを話してもらう懇談を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
インタビューに関しては、すでに紹介を受けている5名のインタビューを今年度の前半に実施する予定である。また、データを分析できる形に整えるために、前年度に未着手であったデータの文字化、本人への確認、質的分析ソフトへのデータの移行も併せて今年度の前半に実施する。今年度の後半は得られたデータの詳細分析に着手することを予定している。また前年度にインタビューに参加した女子大学生2名が就職活動を終えた時点で、もう1名の協力者(今年度3年生)を加えたグループインタビューを実施し、彼女たちの変化を追い、こちらもデータ形式を整える。 成果の発表としては、概要報告論文を1本執筆予定。同時に、データの分析を進めて、2023年度の学会発表への応募を予定。併せて、最新の研究動向を知るための文献調査も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
1件あたりのインタビューデータの文字化に係る経費としては残額がすくなかったため、翌年度へ繰り越し、翌年度に使用を計画したため。
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