研究課題/領域番号 |
21K00533
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
関根 和生 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (60847002)
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研究分担者 |
高嶋 由布子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 流動研究員 (40792271)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ろう児 / 日本手話 / 語用論 / コミュニケーション / 心の理論 / 発達 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ろう児のコミュニケーションの調整能力が加齢とともにどのように発達し,またどのような要因がその発達に関わっているのかを明らかにすることである。2021年度は,アニメーション版心の理論課題(DIK 教育出版, 2021年)の手話版の作成とその検査,および参照コミュニケーション課題の実施を行った。調査は,日本手話を第一言語にした教育を行っている私立のろう学校において実施し,小学1年生4名,小学4年生6名,中学1年生6名のろう児が調査に参加した。本研究が使用した心の理論課題は,難易度の異なる5つの課題から構成されている。検査の結果,80%以上の正答率を示した課題の数は5課題中,小学生1年生で1課題,小学4年生で4課題,中学1年生で5課題であった。この結果は,オリジナルのアニメーション版の課題を使用し,定型発達児を対象とした先行研究(藤野他, 2013)の結果と類似している。このことから,ろう児も聞こえる子どもとほぼ同じ時期に心の理論を獲得していくことが示唆された。参照コミュニケーション課題は,二人一組になり,一人の子どもがもう一人の子どもに対し,互いに異なる複数の絵柄の位置と内容を教えるという課題である。2021年度は,対面で調査を行える時期が限られていたため,予定していた全てのデータを収集する事ができなかったが,同学年同士のコミュニケーションデータは収集することができた。得られた対話データを元に,アノテーションソフトELANを用い,データの逐語録の作成を開始した。逐語録の作成により,問題解決のための手話表現の発達を明らかにすることができる。2022年度は,参加児童の言語能力を測定するための言語検査の実施と,異学年同士のコミュニケーション課題の実施を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,対面で調査を行える時期が限られていた。そのため,いくつかの調査は問題なく実施できたものの,予定していた全ての調査は行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、以下の4点を行う予定である。まず,①文法や語彙などの言語検査を実施し,②異学年同士の参照コミュニケーション課題を実施する。さらに③収集されたコミュニケーションデータを分析し,その結果を④学会で発表する。引き続き感染対策を徹底し,21年度に収集しきれなかったデータを含め,調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ感染状況の悪化に伴い移動制限があった。そのため,調査の回数のみならず,学会参加や対面での打ち合わせの回数も予定よりも少なかった。そのためデータ処理や旅費に関する支出が少なかった。2022年度は,引き続き感染対策を講じながら調査を進める予定である。
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