研究課題/領域番号 |
21K00537
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
宮川 創 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, 助教 (40887345)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | コプト語 / エジプト語史 / 歴史言語学 / 母音組織 / 歴史音韻論 / 文字論 / 言語変異 / 古代文字 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトの2年目である2022年度は、資料の収集とデータ整理、そしてそれらに関する学会発表を中心に研究活動を進めました。本年度は特に、それまでの資料のデジタル化に力を注ぎ、その成果は第14回国際コプト学会で3つの発表という形で示されました。この学会はコプト学の最前線を示す重要な場であり、本プロジェクトがこの学会で発表を行うことは大きな意義がありました。さらに、資料のデジタル化に関する我々の論文が、ドイツのMohr Siebeck社から出版された論文集に掲載されました。これは我々の研究が国際的に評価される一方で、デジタル化によって得られた成果がさらに広範な研究者に共有される機会となりました。 資料収集については、エジプト(コプト博物館、ドロンカ修道院、白修道院、赤修道院)を訪れ、それぞれの地で得た資料をデジタル化しました。これらの地は、コプト語文献の宝庫とも言える場所であり、その収集は本プロジェクトにおいて重要な役割を果たしました。 エジプト滞在時には、アシュート大学の講師であるMona Sawy氏と共同研究を行いました。Sawy氏は、コプト語の医学パピルス・羊皮紙文献の研究で博士論文を書いた方で、その知識と技術は本プロジェクトにおいて貴重なものでした。彼女と共に、未公開のものも含む医学パピルス・羊皮紙文献において、コプト語の母音字表記の研究を行いました。この共同研究は、互いの視点を広げ、新たな知見を得る契機となりました。その研究の結果は東京大学駒場キャンパスで2022年11月に開催された日本オリエント学会年次大会にて発表しました。この学会は、日本のオリエント学界における最も重要な学会の一つです。Sawy氏との共同研究によるコプト語母音組織の研究は、エジプト学のトップカンファレンスである、2023年8月に開催される国際エジプト学会大会の口頭発表に採択されました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エジプトにおいて、アシュート大学を拠点に、アシュート大学講師のMona Sawy氏と共に、ドロンカ修道院や、ソハーグの白修道院・赤修道院で文献調査(羊皮紙文献、碑文、グラフィート)を行った。また、コプト博物館で調査をした。さらに、Sawy氏が持つ豊富なコプト語医学パピルス、羊皮紙、オストラコン文献のデジタル画像を用いた調査も行った。そこで、今までの研究には見られなかった、母音の異綴を多数発見した。その成果は、2022年11月のオリエント学会年次大会で発表した。 これらの調査結果及び発表済みの医学パピルスの研究から、その当時のコプト語の母音体系を明らかにし、オリエント学会で発表したほか、現在論文を執筆中である。 また、コンピュータでの分析対象となるコプト語タグ付きコーパスも、昨今の深層学習の技術を用いながら増設し、その結果を、国際コプト学会にて発表したほか、論文が、古代オリエントや神学の研究書で著名なMohr Siebeck社から出版された。
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今後の研究の推進方策 |
2023年6月に行われるワルシャワ大学でのヨーロッパ・エジプト学会(ECE)および2023年8月におこなれるライデン大学での国際エジプト学会(ICE)にて、本プロジェクトの研究成果を発表する。ワルシャワ大学でのヨーロッパ・エジプト学会では、主にコプト語と古代エジプト語のテキストのデジタル化・コーパス化について、ライデン大学での国際エジプト学会では、アシュート大学講師のMona Sawy氏との、コプト語医学文献における母音組織の共同研究の成果を発表する。今年度は、Sawy氏との共同研究による、コプト語医学パピルス・羊皮紙・オストラコン文献におけるギリシア語やアラビア語からの借用語の母音組織を中心に研究する。その研究を英文論文にまとめ、著名な国際学術雑誌にて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
発表を予定していた海外学会のための航空券の値段が見込みよりも下がったため。使用計画としては、次年度のヨーロッパ・エジプト学会ワルシャワ大会への航空券に使用する。
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