本研究は、3年間(令和3~5年年度)の研究期間中、オリヤ語(インド東部・オリッサ州で話される印欧語)の文法に関して、現地調査を実施して資料を収集し、これに基づいて記述および考察を行った。これをとおして、関係する理論的諸概念について、通言語的多様性・普遍性の解明をすすめた。また、日本語の文法に関して、関連論題の研究を行った。 本研究の最終年度(令和5年度)における研究実績は、主にオリヤ語に関するものであり、次のとおりである。 現地インド・オリッサ州における資料収集の調査を、5~6月、10~11月、12~1月、3月に実施した。旧知の協力者1名と通算70日間、および、大学院生2名と10日間、面接調査を行った。これら一連の調査においては、格、人称、代名詞の照応、類別詞、複数性標示が関わる諸論題に関する資料を収集した。その資料に基づき、オリヤ語に関して、次の①および②の点を明らかにした。 ① 人称・格制約に関して、前年度(令和4年度)までに実施した調査では一定範囲の事実が明らかになっていた。今年度実施の調査では、人称・格制約として捉えられる諸事象は、代名詞の照応上の制約として捉えられる諸事象とともに、より一般的な制約の下にまとめられることを明らかした。これによって、より根源的な理論的説明への糸口が得られた。 ② 名詞句内の複数性標示に関して、オリヤ語は、印欧語インド語派の諸言語のなかで特異な統語構造を持っていることを明らかにした。この特異性が見つかったことによって、今後に解明すべき実証的・理論的な研究課題が新たに生じた。 成果発表は、①に関して、学会発表(および予稿集)1点、論文1点。②に関して、学会発表(および予稿集)1件。
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