研究課題/領域番号 |
21K00552
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
近藤 明日子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変化研究領域, 特任助教 (30425722)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 近代語 / 実用文 / 通時的変化 / コーパス / 一人称代名詞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、明治・大正期に実用文(論説文・報道文等の非文芸ジャンルの文章)において口語体が萌芽し定着にいたるまでの変化の実態を、コーパスを資料として実証的に明らかにすることである。その達成のため2021年度は次の2点を実施した。 1. コーパス化の十分進んでいない明治10年代後半から20年代前半までの口語体実用文のコーパスデータを構築するため、『東洋学芸雑誌』1883(明治17)~1886(明治19)年刊行分から口語体記事を選定し、テキストの電子化を行った。 2. 『日本語歴史コーパス 明治・大正編Ⅲ明治初期口語資料』(https://clrd.ninjal.ac.jp/chj/meiji_taisho.html#shokikogo)を使用して、明治ゼロ年代~10年代前半の口語体啓蒙書9資料における一人称代名詞の使用実態の分析・考察を行い、以下の(1)~(3)の結果を得た。 (1)資料ごとに個別的な特徴を持ち、明治後期の口語体実用文に収斂する以前の様相を示す。(2)多くの資料では、当時の話し言葉の影響を受けた一人称代名詞の語形を使用しており、その中には明治前期の口語体雑誌記事との関係性が見出される問答体の資料『交易問答』『開化問答』も存在する。(3)一方で、講述体の資料『明治の光』のように、文語体の影響を受けた語形を資料も存在する。 この結果は学会で発表した。その内容に修正を加え論文として執筆し、発表する準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要に述べたように、おおむね当初の計画どおり順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度の成果を受けて以下の点を実施する計画である。 1. 明治10年代後半から20年代前半までの口語体実用文のコーパスデータを構築するため、2021年度にテキスト入力の完了した『東洋学芸雑誌』のコーパスデータ化を進める。さらに、『東洋学芸雑誌』以外の資料から口語体実用文を選定し、コーパスデータ化する。 2. 1で構築が完了したコーパスデータから順次使用し、明治10年代後半~20年代前半の口語体実用文の計量的分析の試行を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
作業補助者を使う作業を次年度に実施することにしたために次年度使用額が生じた。次年度に該当作業を行い、作業補助者の謝金に使用する計画である。
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