研究課題/領域番号 |
21K00556
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高山 知明 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (20253247)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オノマトペア / オノマトペ / 擬音語 / 擬声語 / 擬態語 / 音象徴 / mimetic / sound symbolism |
研究実績の概要 |
本研究は,日本語のオノマトペア(擬音語・擬態語)の仕組と,それが歴史的にどのように変化したかを知るための重要情報を提供する。その情報としては,擬音語・擬態語の語形そのものではなく,それらを構成要素(音象徴語根)に分解した上で,音象徴語根が全体としてどのようになっているかを示すものとする。 例えば,「カタカタ」というオノマトペアは,音象徴語根「カタ」から成り,その反復による派生と捉えられる。一見多様な日本語のオノマトペアも,このような分析に依ると,一定数の語根に絞り込むことができる。「カタ」(kata)も,CVCV型語根(Cは子音,Vは母音)の集合の一要素として処理可能となる。 現代語の音象徴語根の全体像は先行研究によってほぼ明らかにされている。本研究では,その成果をもとに,過去の日本語について調査し,現代語の結果と照合する。過去の文献に現れるオノマトペアから音象徴語根を抽出し,現代語の語根と対照できるようなデータベースを作成する。それによって,オノマトペアの歴史的変遷がよりよく見通せるようになると予測している。本研究はそのための基礎研究である。 当該年度は,その作成の前段階として,基礎調査を中心に進めた。具体的には,幕末から明治期にかけて出版されたヘボン『和英語林集成』に収録されたオノマトペアの項目を収集し,その結果を整理した。そして,そこから音象徴語根を取り出した。次年度も引き続き,その作業を継続して行う予定である。また,現代語と対照する上で重要な語義情報についても配慮しつつ進めた。 なお,時代を隔てて問題になるのは,現代語と同音の語根が見出されたとき,それが,現代語のそれと同一か否かの判定である。オノマトペアは,一般語彙と違い,意味に隔たりがある場合に語としての同一性の判定が難しい。当面,この問題は慎重に取り扱うこととし,判断を保留しつつ,データを整理している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ整理,分析については,とくに大きな困難はなく,作業を順次進めている段階である。ただし,データの整理方法,提示方法については更に工夫が必要となっており,現段階で予想以上の時間が掛かっている。 全体としては,概ね予定通り進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っているデータの整理,分析作業を引き続き進めていく。 なお,データベースの作成については,適宜改良を施しながら,利便性を高める工夫を行っていく必要がある。 研究発表,論文への成果公表は,データベースがかなりの程度出来上がってから行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題に関係する学会大会・研究会(資料収集)はすべてオンライン開催であったため,旅費が必要とされず,参加費を「その他」として支出し,また必要とされるパソコンおよびその周辺機器,図書に宛てた。その上で,なお,次年度使用額が生じた。その分は,学会参加費(オンラインも含む)および必要とされる図書の購入に充てる計画である。
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