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2023 年度 実施状況報告書

辞書資料による音象徴語根の史的データベース作成

研究課題

研究課題/領域番号 21K00556
研究機関金沢大学

研究代表者

高山 知明  金沢大学, 人文学系, 教授 (20253247)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードオノマトペア / 音象徴 / 音韻論 / 擬音語 / 擬態語 / sound symbolism / mimetic / 音変化
研究実績の概要

今年度は、作成中のデータベースの一部を利用した研究に注力した。その成果を研究発表を通じて公表した(第37回日本音声学会全国大会でのワークショップ、2023年9月)。また、研究発表の内容をもとにして更に議論を拡充させ、論文としてまとめた。現在、投稿・修正原稿提出中である。
その研究内容は、現代日本語の音象徴語(オノマトペア)と中世日本語のそれとの違いに着目し、音変化につれて、オノマトペアがどのような経過をたどったかを推定したものである。従来、古代語の語頭のハ行子音(p)については、一般語では摩擦音(Φ)に変化した一方、オノマトペアでは音象徴としての必要性から依然p音が保たれたとする分裂説(Φ、pの二音への分岐)が有力であった。これに依れば、例えば「パリ-パリ」「ピカ-ピカ」など、現代語のパ行を語頭とするオノマトペアは、後者の経過をたどって現代語に引き継がれたことになる。しかし、中世語には摩擦音(ハ行)で現れるオノマトペアの形が数多く存在していた(そのことは従来も知られている)。本研究では、そこに改めて焦点を当て、全体としてはオノマトペアにも摩擦音化が生じたと考えざるを得ないことを論じた。ハ行子音が摩擦音化しても唇音の特徴を保持する間は、全体としては、依然としてもとのオノマトペアの働きを果たし得たと推定される。それらのオノマトペアの形は現代語では概ね廃れているので、その衰退は、現代語に向けてハ行子音が唇音でなくなる過程(Φ→h)において起こったと考えられる。
又、この成果をまとめるに当たり、改めてハ行子音の変化は語中(母音の間)が先行し、語頭がより遅れたことを確認した(この点は従来必ずしも明確でなかった)。本論はこれを前提にして論じている。
以上のような成果の公表に注力した一方、データベース作成は予定より遅れている。今後は可能な限り作業を一層進める必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は、「研究実績の概要」において述べたように、データベースの作成を中断し、その一部をもとにした研究の遂行を優先させ、成果の取りまとめと公表を中心に据えたため、データベースの作成は大きく遅れている。これは、研究の進捗状況を踏まえつつ、公表の適切なタイミングを見計らった結果であり、計画通りではないとはいえ、判断としては間違っていない。
また、勤務校での役職に伴う責務のために、その業務に多くの時間と労力を注ぐ必要が生じたため、本研究課題に予定よりも下回る時間と労力しか割くことができなかったことが大きく影響している。むろん、そうした役職に伴う業務は申請時には予測不可能の事態であり、状況としては不可避である。

今後の研究の推進方策

以上のような成果の公表に注力した一方、データベース作成は予定より遅れている。今後は可能な限り作業を一層進めることが求められる。ただ、依然として役職に伴う業務の軽減には限界があるため、補助事業期間延長承認申請も視野に入れて、交付される補助金を無理なく有効に使うことを考えることとする。なお、研究そのものの有効性には問題がないと判断される。

次年度使用額が生じた理由

当該年度においては、勤務校における役職に伴う業務を優先せざるを得ない事態のために、本研究課題に割くことのできた時間と労力が当初の予定を下回った。それに伴って、執行額も予定を下回る結果となった。
次年度は、データベース作成に必要な資料収集とその分析に努めることとし、可能な限り予定に沿った研究の推進を行う。ただし、依然として役職に伴う業務が少なからずあることから、無理なく有効に研究資源を利用するために、進捗状況を鑑みつつ、補助事業期間延長承認申請も視野に入れて、研究を遂行することとする。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ハ行子音摩擦音化の例外: 擬音語・擬態語仮説の再検証(ワークショップ名「音変化の規則性と自然性:歴史音韻論の展望」)2023

    • 著者名/発表者名
      高山知明
    • 学会等名
      第37回日本音声学会全国大会

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公開日: 2024-12-25  

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