研究課題/領域番号 |
21K00560
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
乾 善彦 関西大学, 文学部, 教授 (30193569)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小野篁歌字尽 / 小野〓[竹冠に愚]〓[言篇に虚]字尽 / 浮世絵と文字 / 文字生活史 |
研究実績の概要 |
1、『小野篁歌字尽』諸本の漢字集成とその索引の作成をおこなった。以前紹介した、行間に遺訓を多数もつ大型本を基本として、増補本をのぞく大型本、中型本、小型本に所収の漢字彙一覧データを作成し、これに音訓を付して索引機能を付与し、検索にたえる基礎データを作成した。全136項目667字。検算、確認作業を行っていないので公開には至らなかったが、2022年度中には公開予定である。 2、『小野篁歌字尽』の影響下になった資料群の資料総覧を作成して、書誌調査と主な資料については画像の収集をおこなった。Ⅰ小野篁歌字尽の増補、Ⅱ小野篁歌字尽のパロディー、Ⅲ小野篁歌字尽の展開資料、さらにⅢを戯作と艶本とに分類し、全20点の作品を確認し、とくに重要な『廓〓[竹冠に愚]費字尽』『小野〓[竹冠に愚]〓[言篇に虚]字尽』『無筆節用似字尽』については、諸本の校合を済ませて注解作業に入っている。『小野〓[竹冠に愚]〓[言篇に虚]字尽』については、2022年度に論文を公開予定。 3、浮世絵の文字については、資料の収集が遅れていたが、年度末に着手しはじめ、幕末から明治にかけての戯作者の文章を含む浮世絵資料約30点を収集し、その書誌調査、文字形態の分類を終え、2022年度に研究会を立ち上げ、「浮世絵と文字」と題して口頭発表の準備を進めている。 4、計画にはなかったが、近世期の和歌資料の文字環境について、資料調査をおこない、未紹介の契沖の和歌資料4点の報告と岡山藩主池田家三代の資料の展示、「岡山藩主池田家三代の手蹟」(2021.12.10~2022.1.19、於関西大学博物館)をおこなった。後者では大名の日常の絵と文字による文筆活動が具体的にうかがうことができ、これらは本研究の中心テーマである「文字生活史」の具体的な事例研究と位置付けることができる。今後、この種の調査と報告も順次進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1、『小野篁歌字尽』については、漢字総覧と索引とを作成予定であったが、データは完成したものの最終確認が間に合わず未公開となっている。同様に『小野〓[竹冠に愚]〓[言篇に虚]字尽』の注解も発表には至っていない。ただし、両者ともすでにデータはそろっているので、一定の成果があったことは事実であり、2022年度中には発表は可能である。 2、『小野篁歌字尽』の展開資料の整理については、新型コロナウイルスによる行動制限下で資料調査が十全に行えなかったため、書誌調査に遅れが生じている。ただし、WEBサイトでの調査が進んでおり、画像資料の収集面では順調な進展があった。ただし、これには公開に種々制限があり、すぐに研究成果の公開には至っていない。このあたりもやや遅れていると自己評価せざるを得ない。 3、浮世絵の調査も、新型コロナウイルスによる行動制限のため、山口県萩美術館や東京での調査が困難であったため十全な調査が行えなかった。しかしながら、2022年に入って資料収集の面では進捗があり、これについても、2022年度中には、収集資料の整理が可能であり、一定の成果が期待できる。 4、資料調査が難渋する中でも、「文字生活史」の一側面として、「和歌を書く」という面での文献研究に進展が見られた。古代から近世に至る「和歌を書く」用例の調査から、近世の文字生活の実態の資料まで確認することができ、契沖、池田光政・綱政父子の資料が加わって一定の成果を見た。これは、計画書にはなかったが、本研究が目指す「文字生活史」において、新しい展開を見るものであり、その点では一定の成果があったと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度も図書館・博物館への調査出張は制限のあるものと理解しており、計画の一部変更はやむを得ないものと考えている。一方で、WEBサイトでの調査方法が進展しており、実地調査の欠を補う方法を今後模索することを考えている。『小野篁歌字尽』関係資料の実地調査が困難な状況で、後半に予定していた浮世絵にみる「文字生活史」の方を先行して行う予定である。そのほかの課題については、計画通り遂行できる見通しである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスによる行動制限によって現地調査ができなかったため。またそれにともなって、文献収集についても制限が大きく、資料収集が思うように進まなかった。2022年に入ってから、資料収集は順調に回復しており、2022年度には2021年度分も合わせて、資料収集が行える見通しがついている。現地調査についても、徐々に回復しつつあり、2022年度には予定通りの調査を行うことができる見通しである。資料収集がはかどることによって、資料をデジタル化するためのスキャナーも2022年度には購入予定。
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