研究課題/領域番号 |
21K00562
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研究機関 | 沖縄工業高等専門学校 |
研究代表者 |
崎原 正志 沖縄工業高等専門学校, 総合科学科, 講師 (30828611)
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研究分担者 |
當山 奈那 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (90792854)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 琉球諸語 / 国頭語 / 沖縄語 / アクセント / 言語接触 |
研究実績の概要 |
本研究では、沖縄島北部・本部町内で話される諸方言の言語学的意義、基礎語彙と基礎構文の収集、音韻・アクセント体系の分析・解明、形態論・構文論的分析・解明、本部町諸方言の下位分類を行うことを目的として、令和5年度は下記の内容で研究を実施した。 1.【具体的な研究内容】具志堅、渡久地、伊野波、伊豆味、瀬底の5地点にて実地調査を行い、形容詞活用形および形容詞語彙に関する調査票に基づいて基礎構文の収集および録音を実施した。渡久地方言と伊豆味方言に関しては、アクセントに関しても分析を行った。 2.【研究成果】渡久地方言の基礎語彙のアクセントを再分析した結果、渡久地方言のアクセント体系は、明治・大正生まれの話者と比べたとき、昭和20年代生まれの話者では、下降アクセント化が進み、アクセント体系が中和・簡略化された。例えば、LH・LH=H型の単語がすべてLH・LH=L型に変化していた。原因は、新設集落の言語的干渉によるものだと結論づけた。また、伊豆味方言の基礎語彙のアクセントについても分析した結果、五十嵐(2019)の分類でB類とされている2拍語の語彙の語末が長音化することが確認できた。この特徴は、近隣の伝統的な集落で話される諸方言、つまり国頭語(沖縄北部諸方言)の特徴と共通している。伊豆味集落は、屋取集落であるが、その方言は伝統集落の特徴もいくらか受け継いでいて、国頭語と沖縄語(沖縄中南部諸方言)の特徴を併せ持ったハイブリッドな言語・方言であることが明らかになった。 3.【意義・重要性】言語接触によってアクセント体系が変化するという研究成果が得られたことは、琉球諸語のアクセント研究にとって重要である。 4.【引用文献】五十嵐陽介「日琉語類別語彙(2019年5月17日版)」電子データ(Retrieved from researchmap.jp)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の体調の関係で、当初の予定より調査回数および調査地点が減少した。このことにより、調査はやや遅れている状況である。詳細は次の通りである。【沖縄島北部・本部町内で話される諸方言の言語学的意義】に関しては、調査地点の減少を受けて、解明自体が厳しくなってくると予想される。【基礎語彙と基礎構文の収集】に関しては、動詞活用・動詞語彙に加え、令和5年度は、形容詞活用および形容詞語彙に関する基礎構文の収集を行うことができ、順調に収集できている。【音韻・アクセント体系の分析・解明】に関しても、渡久地方言に加え、伊豆味方言のアクセントについても分析を行うことができたため、順調に進めることができている。【形態論・構文論的分析・解明】や【本部町諸方言の下位分類】に関しては、調査がある程度進んだ後分析が可能となるため、今後の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、本部町27地点において分析を行う予定であったが、研究代表者の体調を考慮すると、調査地点を増やすよりも、現在実地調査を行っている、具志堅・渡久地・伊野波・伊豆味・瀬底の5地点に調査地点を絞り、分析を深めていく方針にシフトしようと考えている。 したがって、上記5地点の基礎語彙と基礎構文の収集、音韻・アクセント体系の分析・解明、形態論・構文論的分析・解明を中心に今後の研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が休職した関係で、予定より調査回数が大幅に減少したことが大きく影響した。
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