研究課題/領域番号 |
21K00572
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
金澤 俊吾 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (70341724)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 形容詞 / 描写述部 / 叙述用法 / 変則的表現 |
研究実績の概要 |
本研究1年目にあたる令和3年度は、基本事例から新たに創出された変則的表現の1つである、英語のwhile句を伴う描写述部の形成過程を考察した。形容詞が、動詞の目的語名詞句と叙述関係を結ぶ、V NP while Aの事例と、目的語が省略されV while Aの統語配列から成る事例をコーパスから収集し、各事例にみられる形容詞の意味的特徴を検証した。 その結果、事例V NP while Aにおいて、形容詞は、動作の過程において、実体の状態が持続している状況を強調するのに対し、事例V while Aにおける形容詞は、先行文脈で提示される名詞句と修飾関係を構築し、一連の動作の最終動作における実体の状態を表していることを明らかにした。また、while Aと共起する動詞の分布を調査した結果、事例V NP while Aには、「通常の描写述部」と同様の動詞、形容詞の組み合わせに加え、「通常の描写述部」の事例では結びつき得ない、新たな動詞、形容詞の組み合わせがみられること、さらに、事例V while Aにおいては、その傾向が一層強くみられることを明らかにした。最終的に、2つの当該事例は、「通常の描写述部」の文法的、意味的特徴を継承しながら、新たに形成、確立されつつある事例であることを示した。本研究の成果の一部は、1件の学会発表において行われている。 また、本研究の学術的背景と密接に関連する、英語の様々な言語現象と理論研究の接続の可能性を探る論考を収録した論文集で、柳朋宏氏(中部大学)、大谷直輝氏(東京外国語大学)とともに編集した『語法と理論との接続をめざして―英語の通時的・共時的広がりから考える17の論考』を、ひつじ書房より刊行した。通時的、共時的視点から、英語の言語現象を観察し、それぞれの理論的基盤に基づいた知見を提示することで、新たな言語研究の可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
叙述用法の形容詞が関わる、描写述部の変則的表現を実証的に検証し、その使用域および形成過程に関する考察を進めている。また、叙述用法の形容詞が関わる結果述部と、限定用法の形容詞が後続する名詞と修飾関係を構築する名詞句にみられる変則的表現に関して、経験的事実の収集作業を進めている。しかし、これらの用例の整理および分析が途中段階にある。そのため、次年度は、これらの作業をすみやかに進め、各表現の意味的特徴の精緻化をはかる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
叙述用法の形容詞がかかわる描写述部と結果述部、限定用法の形容詞がかかわる名詞句を含む構文にみられる、変則的表現の実証的分析をさらに進め、各表現の意味的特徴を精緻化し、形成過程の解明を進めていく。 また、当該表現の出現とその動機付けに関する考察を進めていく。先行研究の知見に基づき、基本事例の文法的および意味的特徴が、当該表現を含む事例にどの程度反映されて形成、確立されているかを明らかにする。さらに、各表現の出現時期ならびに各年代における頻度を調査し、当該表現の使用の経時的変化を明らかにする。この一連の考察を、各構文ネットワークにおける、当該表現の位置づけの解明につなげていく。 本年度の研究成果を論文にまとめ、さらに、次年度の研究で得られた成果についても、学会で発表し、論文にまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度、購入予定であった図書、文献の購入が一部できないものがあったことと、コロナの影響で学会等の出張に出かけられなかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度、購入を予定している図書、文献をできるだけ早い時期に購入するとともに、予定している予算を計画的に執行するよう努めていく。
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