研究課題/領域番号 |
21K00576
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
西川 眞由美 摂南大学, 外国語学部, 教授 (00411702)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | つなぎ語 / 機能的意味 / 語用論 / 逆接 / 付加 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究内容は、さまざまなつなぎ語のうち、当該文脈において「逆接」と「付加」の機能を有する日本語と英語のつなぎ語を観察し、その分析と考察を行うことにより、2言語の類似したつなぎ語の間の機能的相違を明らかにすることである。分析においては、特に、①何と何を関連付けているのか、②主にどのような文脈で使用されるのか、③どのような話し手の気持ちや態度を伝えるのか、④どのような対人関係的な機能を持つのか、といった4つの視点から詳細に行う予定である。 逆接のつなぎ語に関しては、英語において一番広く使用されるbutとその日本語の相当語についての分析を中心に質的・量的に行った。英語butの相当語として(特に訳語として扱われているものとして)は、「しかし」「でも」「それでも」「それにしても」などがあるが、書き言葉と話し言葉でも変わってくる可能性がある。それで、分析に使用した資料としては、もともと英語で出版され、日本語にも翻訳され、年齢にかかわらず広く読まれており、地の文と会話(発話)の両方を同時に扱うことが可能なものとしてハリーポッターシリーズの第一冊目『ハリーポッターと賢者の石』を選んだ。英語版と日本語版において、逆接に関与するつなぎ語とその機能に関して昨年まとめたことを、2022年度の論文として発表する予定である。 付加を表すつなぎ語に関しては、既に英語で発表した代表者の論文を基に、対応する日本語のつなぎ語について分析を続けている。一部は、昨年執筆した『ジーニアス英和辞典代販」や同様に出版予定の談話標識に関する著書において発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、従来の研究内容(本研究と関連のある英語のつなぎ語の研究と日本語の相当語句や訳語との関連に関するもの)を基に、その前年度から開始された大修館出版のGENIUS英和辞典第6版の執筆も同時並行で行っていた。特に、約90項目に及ぶ日英2言語におけるつなぎ語の機能的説明、類似項目との使い方の比較説明、相当語(訳語)の選択、機、能を明らかに表すための用例作成ににかなりの時間がとられた。 加えて、新型コロナウイルス感染症拡大により、校務や授業対応等に常時取り組む必要があった。それにより、2言語におけるつなぎ語の比較対照研究のための時間が制限され、ある程度進めることができたものの、学会での研究発表や、論文として完成させる段階までには至らなかった。 そのような中でも、同分野の研究者達とのオンラインでの意見交換や情報交換は行い、当初の予定にあった半分以上のつなぎ語に関しては研究資料を基に分析をまとめることはできた。付加に関与するつなぎ語の分析もできるだけ早くまとめて発表する予定である。また論文だけでなく、順次出版を予定している談話標識についての著書やテキストにも、本研究の成果を積極的に反映した。
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今後の研究の推進方策 |
英和辞書の執筆、及びここ数年間執筆と修正を繰り返してきた著書(ひつじ書房より2022年秋出版予定)に関しては一段落したので、2021年度から分析を開始した「逆接」という機能を持つ日英2言語のつなぎ語に関する比較・対照研究を進め、学会での研究発表を行ったり、論文を完成させる予定である。 同時に、2022年度の研究スケジュール通り、「対照」と「同格」についての日英2言語の研究にも着手する予定である。 「対照」のつなぎ語については、「逆接」とも関連して、既にある程度の分析の積み上げがあり、できるだけ使用文脈における機能の視点から詳細な考察を行いたい。同時に、ポライトネスなど、対人関係的な観点からも見ていきたい。 「同格」は、特に定型のフレーズが中心となり、関連性理論で言う手続き的意味というより概念的意味という形での分析で行っていることになる予定である。日英2言語でどのように戦略的に同格表現が使用されているかを中心に、分析していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、本研究課題の初年度として様々な学会への参加を通して研究を進めていく予定であった。また、同分野の研究者との対面での打ち合わせ等に出席するため、国内出張費を想定していた。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大のため、学会や研究会への出張が制限され、国内出張旅費に関しては使用する機会がなかった。 2022年度は、できるだけ積極的に対面での学会や研究会への参加、また本研究に関連する著書の執筆のため、同分野の研究者達との打ち合わせ会議への参加を予定し、そのための出張を予定している。 昨年度使用できなかった予算は、今年度の出張旅費として有益に使わせていただきたいと考えている。
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