本研究は、自然言語における定形節のフェイズ性に関して、「収束性(Convergence)」に基づく定式化の下、主語卓越言語と焦点卓越言語の間でパラメータ化されるという新たな見方を提示し、現代語間の共時的変異や英語の通時的変化に対して統一的な説明を与えることで、本研究仮説の妥当性を立証することを目的としている。 研究最終年度である令和5年度の主な研究活動の成果としては、日本語におけるいわゆる「主語条件(Subject Condition)」に関する理論的・実証的研究が挙げられる。当該現象をめぐっては、これまでの先行研究において日本語では適用されないと一般に分析されてきた。それに対して、本研究では、焦点化に関係する助詞が主語要素に付加された場合に、日本語においても主語内部からの抜き出しが不可能になるという経験的事実に着目した。そして、それらの一見相反するような経験的事実に対して、本研究が採用するStrong Uniformityと素性継承システムのパラメータ化の理論的枠組みの下で適切に捉えられることを明らかにした(当該現象については、本研究課題を構想する段階では、定形節のフェイズ性に関するパラメータ化についての本研究仮説を名詞句のフェイズ性(DPフェイズ)へ応用することで説明できるのではないかと想定していた。しかしながら、昨年度実施した調査・研究により、当初の想定では解決し切れない問題点等が明らかになったため、アプローチ方法を再考したものである)。なお、本研究成果の一部については、2023年9月にモンゴル国立大学で開催されたWorkshop on Altaic Formal Linguistics 17において、ポスター発表を行っている。
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