研究課題/領域番号 |
21K00581
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
本間 伸輔 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40242391)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 弱数量詞 / 強数量詞 / 作用域 / 統語論 / 格 |
研究実績の概要 |
本研究は,生成統語論の観点から,英語と日本語における数量詞句(以下,QP)の作用域を決定する要因のうち,①弱数量詞句(以下,弱QP)と強数量詞句(以下,強QP)の作用域の決定方法の違い,②①の作用域の決定へのQPの構造の関与のしかた,③他の認可現象にも関わる一般的な認可の原理を明らかにしようとするものである。令和3年度は主に先行研究のサーベイにより上記①,②の課題について考察を行なった。 ①日本語の弱QPと強QPが作用域の取り方において共通性を示す部分と,異なる振る舞いを示す部分とを整理した。両者は,一つの節内における作用域(以下,内部作用域と呼ぶ)の取り方に関しては,同じ振る舞いを示すが,本研究の中心課題である節を超える広い作用域(以下,外部作用域と呼ぶ)は,弱QPのみが可能であることが先行研究において指摘されている。このことを踏まえ本研究では,内部作用域が広くならないQPは外部作用域も広くならないことを観察した。このことから,QPは広い内部作用域を可能にする条件を満たすことによってのみ,外部作用域を決定するメカニズムに参与することが可能になると分析できる。 ②スペイン語においては,対格を示すaの有無により,目的語QPの内部作用域と外部作用域に関する特性が異なる(Lopez 2012)のに対し,日本語ではQPの内部構造,とりわけQP内部の数量詞の位置が作用域特性の決定に大きく関わる(Homma 2015, 2022)という違いが見られる。この日本語の特徴は,内部作用域にも外部作用域についても共通に当てはまることが分かった。一方,英語では,裸複数名詞句が狭い作用域しかとれないという点以外には,QPの統語・形態的特徴が作用域特性に影響を及ぼすことが(表面的には)見られない。以上のような,QPの統語・形態的特徴と作用域特性の関係に関する言語間の差異を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和元年度終盤から令和3年度における新型コロナ感染症の流行により,学会や研究会が中止もしくはオンライン開催となり,学会出席による情報収集が非常に限られた形でしかできなかった。また,勤務校における非対面式の授業の準備・実施のために相当な時間が必要となり,本研究課題を含む研究活動のための時 間を割くことが困難となった。さらに,平成30年度から継続中の科研費基盤研究Cの課題の進行状況にも遅れが生じている。以上の要因により,本研究の実施に予定通りの時間をかけることができず,進行が滞ることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べた事情により,本研究課題の研究の実施に遅れが生じた。令和4年度においては,引き続き図書,学術誌によるサーベイを継続し, 上記「研究実績の概要」の課題について検討を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に必要な,学術的な情報の収集,および成果発表のために学会出張を予定していたが,新型コロナ感染症の流行により,出席予定であった学会が中止もしくはオンライン開催となり,出張のための経費が未使用として残ることになった。この経費は,令和4年度の研究において,文献の購入および学会への出席 のための旅費として使用する予定である。
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