研究実績の概要 |
本研究は「機能語連鎖(function word sequences)」の言語学的な意味付けを行うことである。その際、大きな問題となるのは「機能語(function words)」と「内容語(content words)」の区分設定である。先行文献調査を行ってみたが、なかなか難儀する課題であることが分かった。R3年度は、主にこの根拠を求める課題に取り組んだ。概要は以下の通り。 標準的には品詞に基づく基準設定である。品詞は可変する。前置詞は閉鎖系的であるが、豊かな空間的・概念的な意味をもつ。他方で、開放系の内容語でも、名詞(thing, place)、動詞(have, get, come, go等)、形容詞(good, bad等)は、人間の認知機構の基盤概念に相当しており、新語創出がない閉鎖系である。一方、頻度で決める基準もある。コーパス言語学の成果を取り入れることで、一つの基準となり得る。この基準では意味希薄な内容語はcommon wordsとして機能語連鎖を構成する要素、とみなせる。この基準の問題は相対的・恣意的になることである。どのような基準とするかは根本的な問題であり、研究の方向を変えてしまう可能性を含んでいる。 また、本研究の構想を、客観試験での会話問題のテキストに応用してみた。試験問題の会話は「会話である」と認識できるので、一般的な会話の特徴を有す。しかし、会話分析が明らかにしている会話の特徴と照らし合わせてみると、会話の冒頭部には、人為的な圧縮が存在し、また、後半部分は問題であるがゆえの特徴的な終わり方がある。しかしながら、中間部の進め方に機能語連鎖あるいはその相当単位が確認できる。 その他の基盤的な作業として、ラジオドラマスクリプトの音声起こしを行って英語会話のコーパスデータの作成を進めた。しかし、計画にあった母語話者との確認の作業は密な環境が必要なため自粛した。
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