本研究は、言語学での重要な区分である内容語-機能語の対立を基盤にした「機能語類連鎖」という理論概念を新規に導入して、対面状況で使用される英語の話しことばでの働きを考察するものである。 令和5年度(2023)の実績としては、英語語法文法学会が企画した出版物『英文法を活かす(仮題)』(開拓社 言語・文化選書)において、「Spoken Languageから見た学習文法」というタイトルで機能語類連鎖に関する論考を著した。具体的には、『ことばの実際―話ことばの構造―』(澤田(2016)、研究社刊)の第二章で、話しことばに遍在的に観察される四つの特徴(「状況省略」、「タグ表現」、「場面に密着した表現」、「強調表現」)について別々に触れたが、「Spoken Languageから見た学習文法」では、四つの顕著な特徴が「機能語類連鎖」という本研究で導入する理論概念で包括的に捉えられることを示した。(令和5年度中に刊行予定であったが、未脱稿の共同執筆者がおり出版が遅れた。本年度の実績には明確に記載できないので、澤田茂保(2024)「穴埋め問題の文法論」を別に著した。) 研究期間全体を通じての研究成果は、令和3年度(2021)に機能語/内容語の言語学的な取り扱いを調査して、それを基に令和4年度(2022)に折衷的な基準を設定して「機能語類連鎖」という概念を構築した。そして、令和5年度(2022)には話しことばでの働きを包括的に捉えたことである。これと並行的に、ラジオドラマのスクリプトでデータベースの拡張を行った。 反省点はコロナ禍のため母語話者とのインタビュー調査による活動が制限されたこと、また、所属大学での役職就任のため研究時間が十分確保できず、結果的に、海外での成果発表を見送ったことである。そのため申請した所用額予算を費消できなかったが、本研究で英語学の新たな視点の開拓はできたと自負している。
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