研究課題/領域番号 |
21K00583
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
寺田 寛 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (90263805)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 認可 / 倒置 / 助動詞 / トップダウン / 生成文法理論 / ミニマリストプログラム |
研究実績の概要 |
2023年度は、倒置の認可方法に関して先行研究の問題点を検証し、トップダウン式構造構築にもとづく統語分析が有用であることを支持する研究を行った。Chomsky (2000)などの素性照合理論を取り入れたPesetsky and Torrego (2001)による素性照合の経済性にもとづく分析や、Chomsky (2008, 2013, 2015)などの位相理論や素性継承にもとづくCarstens et al. (2016)やラベリング理論にもとづくTanigawa (2017, 2019)の分析がこれまで提案され、主語がwh句になる場合に倒置が起きない理由を説明している。これらの先行研究とKim (2022)の理論を比較した結果、位相理論にも素性継承理論にもラベル決定のアルゴリズムにも頼らずに、Kim (2022)の素性の設定を採用すれば、トップダウン式の構造派生が有効な説明理論になりうるという分析を進めた。それだけでなく、Kimの枠組みで問題となる素性の探査領域を制限できることも明らかにした。このような点を論考にまとめ、査読なしの紀要に掲載した。 また、Jason GinsburgやSandiway Fongや松本マスミと共に、日本語における動詞と名詞からなる複合語の派生に関する共同研究にも加わった。寺田はもっぱらデータの提供を担当しつつも、近年の生成文法理論の理解とその応用について、共同研究者たちと理論考察を進め、国際学会での研究発表に応募した。応募の結果、発表を受理されなかったものの、査読者から有益な指摘を得たため、さらなる考察を続けている。 英文法用語大事典の編集を依頼され、複数形専用名詞、集合名詞、派生名詞、複合名詞、不可算名詞などの用語解説の原稿執筆を行うなかで、今後の研究につなげ、それらに関連する文法現象の理論化を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
労働時間を朝は8時30分から午後5時15分までとし、夜間土日祝日は仕事をしていないように制度上は制限されている。これを守れば(心と体は健康でいられるかもしれないが)、研究に充てる時間はおろか、研究以外の仕事に充てる時間すら十分ではない。研究以外の仕事をおこなっているだけで、1日8時間の労働時間を越えてしまう。 日本人の睡眠時間が先進国で最も少ないとか、日本の注目される論文数が過去最低の世界12位にまで低下している、という報道につながっているのはこのためではないだろうか。 そのような、研究に費やせる時間のない中で、立てられる研究の計画といえば、学会発表や査読付き論文を掲載させるという大きな仕事を計画するのは難しい。査読のない紀要に論文を1つ掲載するくらいしか時間的余裕がないためである。2023年度についていえば、査読なし論文を1つ紀要に掲載することができ、共同研究の中で学会発表に応募することができ、用語事典の原稿執筆と編集作業を行うことができたため、おおむね予定どおりに研究を進めることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、この個人の科研費の研究テーマとして主語助動詞倒置を取り上げた。当初予定していた数量詞に束縛される代名詞の弱交差現象から、研究テーマを倒置に変更した。 このように研究の推進方策は変更する可能性があるものの、2023年度の仕事を発展させ、さまざまな性質をもつ名詞の認可について研究を2024年度に行う予定である。とくに英文法用語大事典の執筆依頼を受けて名詞について考える中で、可算名詞と不可算名詞の認可という問題を研究する価値があることが分かった。そこでの認可とは、可算名詞が単数形の際に、決定詞がついていなければ非文法的になるというよく知られている現象である(I have a dog vs. *I have dog)。これに関して、研究テーマにプラスに働いている用語事典の執筆と編集をつづけながら、トップダウン式構造構築理論によるよりよい説明を追及する予定である。 さらに共同研究者たちとの日本語の複合語の研究にも昨年度同様に協力し、Chomsky 2021で提案されいるForm Copyという概念やChomsky 2024で提案されているBox Theoryについての理論的な貢献を行うことができるよう、このテーマについての共同研究を続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度においては国際学会に出席する必要が出てくることも念頭においていたが、学会発表への応募が採用されなかったため、海外渡航費のための金額を残すことになった。 また、本研究に関わりの深い研究図書が予想を下回る数しか出版されなかったため、次年度使用額として今後発売される研究図書の購入に充てることとした。 数年前からの物価高騰と留まることのない円安は周知の事実であるが、科研費の支給額はそれに応じて増加するわけでも、補充されるわけでもない。 2024年度は、国際学会への出張費・参加費や洋書(とくに電子図書)のための額を担保し、かつ、2021年度から得ている科研費で購入したものの不具合がでているパソコンに代わって新しい高性能パソコンを購入することを予定している。そのため、2023年度の使用額を繰越金としてこれに充てることとした。
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備考 |
紀要論文を大阪教育大学付属図書館のレポジトリとして閲覧ダウンロードできるようにするサービスにより、2024年2月に出版した拙論をアップロードしている。
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