本研究の最終年度では、統語構造と意味のミスマッチとして、本研究当初よりその解明に取り組んできた副詞節主語(adverbial subject clause)が、意味部門により認可されるものであると結論付けるに至った。 ただし、その一方で、意味的に認可される場合、その統語環境が擬似分裂文(pseudo-cleft sentences)になっていなければならないという、新しい事実を発見した。なぜそのような環境の場合に、副詞節主語が認可されるのかについては、新たに擬似分裂文を対象とした包括的研究が必要なため、また新たな問題が生じることとなった。 擬似分裂文の研究については、関西大学外国語学部の郭揚氏との、本研究とは異なる位置付けで進めてきた研究と重複する点が生じた。郭氏とは、中国語の「是・・的構文」を統語的・意味的側面から研究を進めてきており、これまでの成果は2023年10月に中国の北京市にある、清華大学で開催されたThe 10th International Conference on Formal Linguisticsで発表を行った論考にまとめられている。 その際、「是・・的構文」において特定の要素が焦点として解釈される統語メカニズム(位相主要部による焦点素性の継承)を提案したが、それが日本語あるいは英語にも適用できる可能性を示唆した。今後、その点を新たな研究テーマとして研究を継続していく予定である。
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