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2021 年度 実施状況報告書

省略構文の考察に基づく、焦点に関する言語間差異の解明と焦点理論の再構築

研究課題

研究課題/領域番号 21K00589
研究機関千葉工業大学

研究代表者

木村 博子  千葉工業大学, 工学部, 助教 (40637633)

研究分担者 成田 広樹  東海大学, 文学部, 准教授 (60609767)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード統語論 / 省略 / 焦点
研究実績の概要

本研究は、(1)省略文における焦点要素の意味解釈と表示方法の解明(2)省略文と非省略文の対比の考察から、省略の有無が焦点の意味解釈と表示方法に影響を及ぼすのか否かを明らかにすること(3)上記の(1)と(2)の研究成果をもとに、意味情報と音情報の結びつきを正しくとらえることができる焦点理論はどのようなものかを明らかにすることを目的とするものである。
今年度は、Why-StrippingおよびSluicingと呼ばれる省略構文において、焦点要素として発音される残余句がどのような意味解釈を受け、統語構造上どのような位置で音形表出されるのかを検討した。特に、「省略構文における焦点要素は音形化を受けるために省略領域から逃れることで、非省略文における通常の焦点位置とは異なる位置で音形表示される」とする仮説の問題点を指摘し、少なくともWhy-Strippingにおける焦点要素は非省略文の場合と同じ位置で音形化されていると考えるべきであると示した。当該の研究成果は、English Linguistics (38)にて公表した。
また、複数の焦点要素を残余句としてもつMultiple Sluicingを考察し、複数の焦点要素が音形表示される仕組みについて調査した。当該の研究成果は、国際学会the 35th Pacific Asia Conference on Language, Information and Computationにおいて口頭発表するとともに、当該学会のProceedingsにおいても公表した。
さらに、共同研究者である成田広樹氏とは、Fragment Answersと呼ばれる省略構文における焦点要素の特性の解明を目指す研究を進めている。それと同時に、今年度の研究代表者のWhy-StrippingとSluicingに関する研究成果を踏まえ、省略と焦点特性を正しく捉えることが可能な言語理論モデルの検討に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は省略文における焦点要素の意味解釈と表示方法の調査を進めることを目的としてきた。現時点で、Why-StrippingとSluiciingと呼ばれる2種類の省略構文における焦点特性の調査を進め、一定の成果を国際学会や論文として公表することできた。
また、共同研究者である成田広樹氏とは、定期的に意見交換の場を設け、Fragment Answersと呼ばれる省略構文における焦点要素の調査に着手した。加えて、省略文における焦点要素の音形表出を適切に捉えられるか否かの観点から、複数の言語理論モデルの候補の比較検討作業にも進むことができた。
複数の省略構文における焦点特性の調査を進められたという意味で、研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

令和4年度は、省略文と非省略文の対比を考察し、「省略の有無が焦点の意味解釈と表示方法に影響を及ぼすのか否か」を明らかにすることを主たる柱として、研究を進める。現時点では、日本語と英語の節を省略対象とする省略構文(Why-Stripping,Sluicing, Fragment Answers)を中心に研究を進めているが、今後は扱う言語と省略構文の種類を広げ、(1)省略が焦点の意味や表示方法に及ぼす影響の有無、(2)省略による影響があるのであれば、その影響を正しく捉えることが可能な理論を検討する。焦点要素が担う意味の研究は研究代表者の個人研究として進め、表示方法についての研究は成田広樹氏と共同で進める。すでに調査を進めているFragment Answersの考察に基づく研究成果を公表できるよう努める。
令和5年度には、前年度までの調査結果を踏まえ、省略構文における焦点特性および省略文と非省略文の対比が、既存の焦点理論により説明可能かを検証し、必要に応じて、既存の焦点理論や省略理論の修正や新たな理論の立案を目指す。特に、省略構文において焦点解釈を受ける要素と、既出の旧情報として解釈を受ける要素の特性を正しく捉えられる理論がどのようなものであるかを検討する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ感染症のために学会がオンライン開催となり、学会発表のための交通費・宿泊費を使用せずに済んだ。
また、購入予定であった一部の物品の発送に時間がかかることが判明し、今年度内の会計処理が難しいため、次年度に購入することにした。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] An In-Situ Analysis of Why-Stripping2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroko Kimura
    • 雑誌名

      English Linguistics

      巻: 38(1) ページ: 1-32

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Lexical Meanings of Ditransitive Verbs in Japanese2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroko Kimura and Chigusa Morita
    • 雑誌名

      Proceedings of the 35th Pacific Asia Conference on Language, Information and Computation

      巻: 35 ページ: 520-528

  • [学会発表] Lexical Meanings of Ditransitive Verbs in Japanese2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroko Kimura and Chigusa Morita
    • 学会等名
      The 35th Pacific Asia Conference on Language, Information and Computation
    • 国際学会
  • [図書] Symmetrizing Syntax: Merge, Minimality, and Equilibria2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Narita and Naoki Fukui
    • 総ページ数
      330
    • 出版者
      Routledge
    • ISBN
      9781138944435

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公開日: 2022-12-28  

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