研究課題/領域番号 |
21K00593
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
中川 聡 藤田医科大学, 医学部, 講師 (90566994)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | TP欠如動名詞 / vP構造 / ラベル付けアルゴリズム |
研究実績の概要 |
TP欠如動名詞の統語構造と派生を明らかにした。統語構造については虚辞thereがTP欠如動名詞とは共起しないことや、TP欠如動名詞は主節と独立した時間を表すことができないことから、vP構造であると分析した。 先行研究ではTP欠如動名詞の外項が受動化により主節の主語位置に移動する用例は非文法的であるという事実に基づき、その構造は格素性を持つTを主要部とするTPとする分析が提案されていた。これに対し、Huddleston and Pullum (2002)の主節動詞と埋め込み節のV-ingの間に介在する名詞は、その名詞が主節の目的語であるときにのみ受動化などの移動を受けるという一般化に基づけば、TP欠如動名詞の構造をvPとする分析の下でもその外項が受動化により主節の主語位置へ移動できないことを説明できることを示した。 派生に関しては、Chomsky (2013,2015)で提案されているラベル付けアルゴリズムに基づいて理論的な説明を与えることを試みた。具体的には、TP欠如動名詞を含む文の主節の主語はTP欠如動名詞の外項として派生に入り、TP欠如動名詞のラベル決定のために主節の主語位置まで連続循環的に移動すると分析した。また、この移動はHornstein(1999)で提案されているコントロールに対する移動分析での移動と同様の派生であるため、本分析によりTP欠如動名詞の主語には義務的コントロールPROしか現れないという事実も説明されることも示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画ではこれまでにTP欠如動名詞の構造を明らかにすることと、その派生をラベル付けアルゴリズムに基づいて理論的に説明することが予定されていた。これらの2点に対し研究成果を挙げることができたので、概ね当初の計画通り研究を進めることができていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の進捗方策として、TP-欠如動名詞がなぜ他の動詞的動名詞とは異なる統語的特性を示すのかに注目して分析を進めることを考えている。しかし、当初の計画を修正する必要があることも同時に感じている。これまでTP欠如動名詞が英語史においてどの時期に動詞に選択されるようになったかを史的コーパスを用いて調査をした。しかしその調査結果によると、TP欠如動名詞の発達時期はそれを選択する動詞により異なっており、TP欠如動名詞として一般的な観点から上述の他の動詞的動名詞との相違点を明らかにすることが困難である可能性が生じている。したがって、TP欠如動名詞を選択する一部の動詞に焦点を当て、その動詞の通時的発達を考察することで、上述の他の動詞的動名詞との相違点を明らかにするという方策に修正することを検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた大きな理由として参加した学会がすべてオンラインで開催され、当初予定していた旅費を使用する機会がなかったことが挙げられる。今後の使用計画として、学会参加の旅費に充てるか、もしくは研究関連図書の購入に充てることを考えている。
|