研究課題/領域番号 |
21K00602
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
八木 真奈美 駿河台大学, グローバル教育センター, 教授 (20579164)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 質的研究 / 方法論 / リフレクシブ / ナラティブ / エスノグラフィー / 存在論 / 認識論 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本語教育研究分野における、質的研究を行う研究者を対象とする研究である。質的研究は、単なる調査方法ではなく、哲学的・理論的背景をもつ方法論(methodology)である。関連する哲学や理論は幅広く、その定義は様々ではあるが、ここでは、「事物を意味の観点から理解ないし解釈しようとする」研究であると定義する。この「理解ないし解釈」のプロセスは、鏡としての自己の理解であり、研究者はリフレクシブ(reflexive)に自己を捉える必要に迫られる。このリフレクシブという概念は、質的研究の鍵ともなる「理解ないし解釈」に関わる重要な概念であるにもかかわらず、日本語教育研究における質的研究では、これまであまり注目されてこなかった。そこで、本研究は、研究における他者の理解と自己の理解のリフレクシブな往還のプロセスを明らかにし、研究者にとっての研究の意味を問うものである。研究のプロセスや研究実践が研究者に与える影響を明らかにすることによって、日本語教育に携わる者が、研究者として、また教育実践者として成長し、日本語教育研究の分野に新たな研究や実践の形をもたらし得る可能性があると考える。本研究は、以上の研究目的に沿って、3段階で研究を進めている。 (1)質的研究の全体像を把握するための国内外の質的研究に関する文献調査及び日本語教育研究における質的研究の類型化 (2)質的研究のプロセスを明らかにするための研究者を対象とするナラティブ調査の実施 (3)上記2点を踏まえた質的研究ガイドの作成である。 初年度である2021年度は、質的研究に関わる先行研究や文献の調査、研究者を対象としたナラティブ調査を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究計画が以下の通り概ね計画通りに進んでいるため。 (1)日本語教育研究における質的研究の現状を把握する:調査項目を追加し、質的研究のみならず、主要学術雑誌における近年の日本語教育研究の論文すべてを方法論の観点から分類することとし、文献調査を進めている。 (2)研究協力者への調査の開始:2021年度後期に2名の研究協力者にインタビューを依頼し、ナラティブ調査を開始した。また、他の研究者と共同で研究プロセスを探るための新たな調査方法の検討を開始した。 (3)研究成果の公開・質的研究ガイドの作成:質的研究に関するホームページを立ち上げ、「研究ノート」や「研究例」などのページを作成し、研究成果を公開した。また、質的研究に関する議論を深めることを目的に「研究カフェ(質的研究会)」を発足、2021年度の4・9・2月の3回、研究会を開催した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画について (1)質的研究に関する文献調査及び日本語教育研究における質的研究の類型化:できる限り最新の研究を含めるため、調査を継続し、随時更新していく。2022年5月に成果の学会発表を予定している。 (2)ナラティブ調査:当初計画ではフォーカスグループインタビュー調査を開始する予定であったが、研究のプロセスは個人の経験を明らかにする面もあることがわかったため、プロセスを探求するという研究の目的に合わせ、新たなエスノグラフィーのインタビュー方法の採用を予定している。 (3)研究成果の公開・質的研究ガイドの作成:引き続き、研究会の実施、ホームページの充実、ガイドの作成を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の拡大が収まらず、移動を伴うインタビュー調査を延期したため、次年度使用額が生じた。次年度も安全に配慮しながら、インタビュー調査を推進していく。
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