16世紀後半から17世紀初頭にかけて来日した宣教師たちが作り上げたキリシタン・ローマ字文献について、ポルトガル語式表記で記されたイエズス会資料とラテン語式表記で記されたドミニコ会資料、この双方の写本と版本における日本語ローマ字表記法の観察を行った。新型コロナウイルス感染症の影響により実現できていなかった現地資料調査を昨年度の3月に再開したが、本年度も11月にポルトガル、2024年2月にバチカン、イタリアでの調査を行い、今までの研究活動で作成したデータと照らし合わせ比較検討を行った。
(1) 2023年11月にポルトガル国立図書館、アジュダ図書館、エヴォラ図書館、リスボン科学アカデミーで文献調査を行った。撮影可能な資料は撮影を行い、できない資料は複写申請を行い、データ収集を行った。また、2024年2月にもバチカン市国のバチカン図書館、イタリアのイエズス会ローマ文書館、カサナテンセ図書館、アンジェリカ図書館で同様の文献調査を行った。この資料のデータは現在テキストデータ化中である。 (2) キリシタン・ローマ字文献各資料のローマ字表記法を確認するにあたり、テクスト内に存在する難語などを抜き出し、それに対する説明を施しABC順に並べた語彙集「ことばのやわらげ」を詳細に観察したところ、本文に記載のない語が採録されていることがわかった。 (3) キリシタン・ローマ字文献各資料のローマ字表記法を確認するにあたり、国字本のテクスト内に付随する「字集」も詳細に観察したところ、『さるばとるむんぢ』(1598)『おらしよの翻訳』(1600)では、大方記載される単漢字が本文で使用されている。また、『ぎやどぺかどる』(1599)の「字集」内には、読者の検索利便性の向上のための編纂を行っていることがわかった。
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