本研究では、16世紀後半から17世紀初頭にかけて来日した宣教師たちが作り上げたキリシタン・ローマ字文献における日本語表記法の観察を行った。従来のキリシタン文献を用いた研究は、主にポルトガル語で記されたイエズス会の資料から見た日本語表記の実態を反映したものであり、当時少数ながらも同様に日本で活動していたスペイン語で記されたドミニコ会の資料の視点をも十分に含んだものではなかった。また、イエズス会の資料で、写本と版本で書写方法が異なるように、ドミニコ会の資料にも写本と版本があり、それを十分に踏まえた上で、日本語表記方法の変遷をとらえた。
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