研究課題/領域番号 |
21K00617
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
上田 和子 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (30550636)
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研究分担者 |
和泉元 千春 奈良教育大学, 教育連携講座, 教授 (00625494)
小林 浩明 北九州市立大学, 国際教育交流センター, 教授 (10326457)
野畑 理佳 武庫川女子大学短期大学部, 日本語文化学科, 准教授 (90298373)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 言語ヒストリー(LH) / 日本語教育 / 日本語教師研究 / ナラティブ / ライフヒストリー / 自伝的手法 / 教師の研究コミュニティー / 内的キャリア形成 |
研究実績の概要 |
本研究は日本語教師の専門的力量すなわち【知識】【技能】【態度】とは何か、それはどのように獲得されてきたのかを明らかにするために、日本語教師の経験を「言語ヒストリー(LH)、以下「LH」)」を用いて検討するものである。 1年目(2021)は「LH」実践(LH記述とレビュー)とそのデータ集積、2年目(2022)はデータ分析に焦点を当て活動を行った。分析ではテキストマイニングとともに分担者同士による自己・他者分析を重ね、言語をキーワードに日本語教師の経験について多角的に考察した。3年目(2023)は、分析結果を口頭発表や執筆につなぐことができた。特に国際学会での発表の実現は本年度の成果である(第13回国際日本語教育・日本研究シンポジウム於:香港大学専業進修學院 2023.11.18-19)。また、教師研究の近接領域「セルフスタディ」研究者と協働研究として、オンラインウェビナー、ラウンドテーブル等の活動を行うことができた(中国四国教育学会第75回大会等)。 本年度は研究者4名がそれぞれの視点で展開できたことが重要な実績だと考える。その過程で、従来のキーワード「自伝的手法、教師の研究コミュニティー等」に加え、「日本語教師の内的キャリア、言語ポートレイト、セルフスタディ、ゲシュタルトへの接近、若手日本語教師」といった考察を深める視点を得ている。これは「日本語教師の専門的力量すなわち【知識】【技能】【態度】とは何か」のうち、特に「【態度】とは何か、それはどのように形成されるのか」の探究に迫るものであり、さらに「LH」を通じた教師コミュニティーを視野においた日本語教師研究への展望が認められる。 しかし、3年ではすべての成果を実らせるまでには至らなかった。延長を認めていただいた4年目(2024)に、論文出版、口頭発表とともに共同研究者との研究成果を公開していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(2)おおむね順調に進展している。理由 2023年度はコロナ禍後の「再開の年」であった。本研究の1年目は「言語ヒストリー(LH)」の実践とデータ収集、2年目はデータの分析、3年目(2023)は共同研究者各自の視点で考察を深めるとともに、口頭発表の機会を得た。その点でおおむね順調に進展してきた。特に国際学会の口頭発表が実現するともに、日本語教師だけでなく教師研究者との連携やメンバー以外(同僚や若手日本語教師)とのつながりへと発展している。そして共同研究者の協働そのものの価値や意味に対する認識の深まりも成果と言える。 和泉元、野畑、小林は「日本語教師によるオートバイオグラフィーの実践と考察―日本語教師の「ことば」をめぐる経験の語りから―(第13回国際日本語教育・日本研究シンポジウム於:香港大学専業進修學院 2023.11.18-19)で、言語ヒストリーと「日本語教師の内的キャリア形成におけることばを巡る経験の意味」について発表した。小林は「言語ヒストリーを介したテキスト対話による日本語教師研究~日本語教師の相互理解とゲシュタルトへの接近を目指して~」で「ゲシュタルトへの接近」をもたらす手法としての言語ヒストリーについて執筆した(北九州市立大学国際教育交流センター紀要)。上田は教師研究方法の一つである「セルフスタディ」の研究メンバーとともに「日本語教師研究にとってのセルフスタディの可能性」の標題でウェビナー発表した(広島大学大学院)。それは「ラウンドテーブル4 セルフスタディを語り合うー教師教育者の「教えることを教える」ことの探求とその成果―」(小林、上田他9名、中国四国教育学会 第75回大会 於:広島大学2023.11.25-56)での発表へとつながった。 ただし、当初3年で計画した活動すべてをやり終えたわけではない。コロナ禍による研究活動の制限は様々に影響を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
4年目に当たる2024年度は、本研究の総決算になる。言語ヒストリー(LH)の実践から得たものを日本語教師研究の文脈に位置づける、というのが挑戦になる。3年間の活動を通じて、共同研究者4名それぞれ研究課題として注目する点が明らかになってきたが、各自が研究手法を精査し検証を進めるとともに、それを日本語教師研究、日本語教師教育の分野に貢献するために、得られた知見を公開し、共有することが今年度の重要な課題と言える。そのための活動課題として、①論文集等の執筆活動、②2024年度における口頭発表等成果報告の計画策定、③年度後半での教師教育研究、日本語教師研究等の関連分野の研究者との共同発表の実施(言語文化教育研究学会大会など)、④若手日本語教師との協働などがある。 上田は若手日本語教師約10名との「言語ヒストリー(LH)」実践により、共同研究者との「LH」との共通点や相違点の双方で多くの示唆を得ている。それも踏まえて、言語ヒストリー(LH)の実践手法(①実践方法、②データの分析手法、③日本語教師の経験の表出、④経験の理解、⑤「他者」とのレビューなど)とともに、「LH」が何で構成され、それによってどのような自己理解、他者理解が促され、日本語教師という職業人としてのアイデンティティを獲得しているのかというプロセスを発表し共有を目指す。 1次データは研究メンバーの共有のものとして活用する。本実践での研究結果を踏まえ、それぞれの実践者の質的データについてより多角的な視点から意味を探求していくことは課題の一つである。上半期は年度内での成果発表を関連学会・研究会等を企画するとともに、関連研究者との連携を図る。その間、研究者各自の課題を明確化しそれぞれに取り組むこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、期間中に学会出張などがほとんど実現できなかった、そのため計上していた旅費とシンポジウム開催などの費用が支出できていない。また、研究代表者の上田が疾病のため、8月~10月まで傷病休暇を取得し療養した。そのため共同研究者全体での活動を一時停止しなければならなかった。結果的に、本研究の総括的な活動まで実現できなかった。ただその中で、メンバー各自で研究を進め一歩ずつ成果を上げることができたのは幸いである。 最終年度は、若手日本語教師研究協力者への謝金が引き続き経費として生じる。また本研究で挙げた成果をもとに、関連領域の研究者とともにパネル発表等を計画している。そのために旅費や発表準備等での使用が生じる。さらに、論文執筆と英文での投稿を見込んだ校閲等に経費を使用したい。
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