研究課題
定住外国人のネットワークの質的な把握を通して、どのような問題と解決方法があり、そこに日本語はどのように関与したのかを明らかにすることを目的に本研究を実施してきた。昨年度の成果である、「地域日本語学習を推進している行政(県、市町村など)の想定しているニーズと、地域に住んでいる外国人の日本語学習に対するニーズには違いがある」という仮説を確認するためにも、昨年度実施したインタビュー調査の対象者にさらにインタビューを進めた。現在までに、日本在住3年以上の3名を対象に延べ、9時間の非構造化インタビューを実施した。インタビュー協力者との信頼関係の醸造により、出産や育児、子供の受験等のライフイベント、家族の病気、といった個人的な内容が多く語られた。協力者A(スリランカ出身)からは、コロナ禍での初めての妊娠、出産、その後の育児に関して、日本にいる家族や親類との協力体制を重視する傾向が顕著である一方、それにかかわる地域のサービスの情報の取得や、そのサービスを積極的に活用する意思を確認することはできなかった。日本人からの情報は、以前からの知り合いの日本人、特にアルバイト先や、通っていた日本語教育機関の教師からに限られていた。協力者B(ブラジル出身)からは、特に家族の病気の際の日本語や日本人とのかかわりが語られた。偶然再会した日本人により緊急事態を乗り切ったが、本人の日本語力がJF日本語教育スタンダードでA2からB1程度であることから、医療関係者とのやりとりを日本語ですることは十分にできなかったため、家族の病状に関する正確な情報が自分に入ってこないことに大きなストレスを感じていた。本研究をスタート時は、外国人定住者には生活する上でのネットワークがあることを前提と考えていたが、今回のインタビューからは、外国人同士のネットワークに必ずしも依存していない様相が明らかになった。
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SIPB - LeiCon II Literacy Entrepreneurs: Opportunities and Challenges in the Digital Age Education Industry
巻: 02 ページ: 9-13