研究課題/領域番号 |
21K00630
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研究機関 | 中央学院大学 |
研究代表者 |
田島 ますみ 中央学院大学, 法学部, 教授 (90534488)
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研究分担者 |
松下 達彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00255259)
佐藤 尚子 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (40251152)
近藤 裕子 山梨学院大学, 学習・教育開発センター, 准教授 (70734507)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本語読解力 / 日本語母語話者 / 大学生 / 学術共通語彙テスト / 文章難易度 |
研究実績の概要 |
2021年度は本研究プロジェクトの初年度として、次年度に行うデータ収集に備え、予備的な調査を行った。本研究の目的は、日本語母語話者である大学生の論説文読解力の問題を明らかにすることにあり、読解テストと語彙テストを実施して低得点者を抽出し、彼らを対象としたインタビュー調査を行って、どのような問題が正確な読解を妨げているのかを特定するという手続きをとる。その調査方法が適切であるかを確認するための予備的な調査を行った。 低得点者を抽出するための読解テストは公務員試験で出題された文章理解の問題を使用することとし、問題を選定して4月に実施した。また、語彙テストは日本語学術共通語彙テストを選択し、オンラインで4月に実施した。結果として、読解テストでは本研究の仮説を支持するようなデータは得られず、オンライン上で実施した語彙テストは受験しない者が続出し、収集できたデータに偏りが出た。これらを受けて、本調査への準備として、読解テストは問題を見直すこと、語彙テストはオンラインではなく紙媒体で一斉に実施することを決定した。 読解テストの見直しで、まず挙げられたのは文章難易度の違いの影響である。読解問題の難易度には各問題で使用されている文章の難易度が大きな影響を与えているのではないかと考え、難易度を客観的に示すことのできるシステムの利用を検討した。日本語学習者用に開発されたシステムを使用して読解テストの正答率と照らし合わせてみたが、相関は認められなかった。引き続き、より適切な読解テスト問題を検討中である。 また、インタビュー調査では、授業がオンラインであることが多かったため、低得点者と連絡をつけられず、読解力にあまり問題のない学生のデータしか得られなかった。対面授業が再開されつつあるので、この問題は解消されると思われる。インタビューの項目に関しても、より明確なデータが得られるよう検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備的な調査における読解テストの結果がこれまでとは異なる傾向を示したことが大きい。仮説の一つとして、文章の部分的な情報の読み取りよりも文章全体の要旨読み取りが難しいというものを立てていたが、これに合致する結果が出なかったことから、読解テスト問題を再検討し、客観的な基準で難易度をコントロールする必要が出てきた。その検討に時間がかかっている。 また、コロナ禍による遠隔授業の体制下で、インタビューの対象となる大学生と連絡がつかなかったことも時間を取られた要因である。テストの低得点者はさまざまな問題を抱えていることも多く、教員側からの連絡には答えないことも多い。やむを得ず、連絡のついた、読解にあまり問題のない学生にインタビューを行った。手順としては本調査の練習となったが、読解の困難点を特定するという目的をより効果的に達成する意味において、質問項目の精査を行っている。 以上の、読解テスト問題の見直し、インタビュー項目の精緻化の2点を十分に検討するため、当初2022年度4月に予定していたデータ収集を延期し、後期のはじめ(9月~10月)とすることにした。研究計画では初年度に予備調査、翌年度に本格調査、最終年度に分析・考察としているので、今年度中に本調査としてのデータ収集を終えれば問題はないものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり、やや遅れてはいるものの、研究目的に合致する、より具体的で明確なデータが得られるように読解テスト問題とインタビュー項目を再検討している。前期のデータ収集は延期したが、後期に改善されたテストとインタビューが実施できれば当初の計画は達成できるものと考える。 今年度中にデータ収集と集計を終え、終わり次第分析に着手し、最終年度には得られた知見の発表を中心に遂行していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、学会・研究会等がすべてオンライン開催となり、また、研究の打ち合わせに関してもオンラインで行ったため、旅費の支出がなかった。 さらに、大学生へのインタビュー調査を予定していたが、これもコロナ禍で直接会って話をすることができず、インタビューに応じてくれた学生がわずかであった。インタビュー調査実施人数の少なさから、対象者への謝金、その後のテープ起こし、データ集計や整理などでの人件費にかかった費用も見積もりより少額となった。 2022年度は学会の対面開催が徐々に再開されつつある。学会への参加、および研究打ち合わせも積極的に対面とすることで旅費の支出が増加すると思われる。また、インタビュー調査は十分な数の対象者を確保して行うことで、これに伴う支出も増加することが見込まれる。さらに、データ処理・保存等に関する物品の購入を行う予定である。
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