研究課題/領域番号 |
21K00633
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
沖本 与子 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 講師(任期付) (30802144)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本語教育 / オンライン学習 / 対のある自他動詞 / e-Learning / 語彙学習 |
研究実績の概要 |
本研究は日本語学習者と日本語教師のためのオンライン自他動詞習得支援システムの開発を目的とし、2021年度は春と秋にそれぞれ研究調査を実施した。 まず春学期には2020秋に実施した調査の参加者を対象に、遅延テストを実施した。分析では2020年秋のプレテスト・ポストテストと2021年春の遅延テストを比較し、基本統計量はポストテストで数値が上昇し,遅延テストで下降しているが,遅延テストの基本統計量はプレテストより高いことが分かり、学習者の知識が6か月後も定着していることが確認された。またインタビューの分析から、2020年秋の調査終了後も、学習者が対象文中・対象会話中に出現する対のある自他動詞を認識し、かつ産出時には正確な運用を心がけていることが確認された。 次に秋学期には対のある自他動詞と初級と中級の文法を組み合わせた計1250項目を用意し、これらの項目を1日50項目学習する5週間のオンライン学習を実施した。実施したプレテスト・ポストテストでの伸びが確認できた点と、調査終了後に実施した作文課題では、学習者が自動詞・他動詞の区別を明確にした産出を行ったことが分かった。 情報化社会が進み、かつ2020年以降の社会情勢により、日本語学習者の来日が停滞している現在、日本語学習者の苦手意識が高い「対のある自他動詞」をオンライン上で学習できることは、本研究の意義の一つである。かつ、2021年春の調査から確認されたように、学習者が5週間のオンライン学習終了後も自主的・自律的に対のある自他動詞の運用を行っていることは、学習者の自己モニターと自ら学ぶ力を促進した点も本研究の意義の一つであると考えられる。 個々の学習者の習得状況を追跡調査し、自主的自立的学習支援を行う学術的独自性・創造性を含有する本研究は、日本語教育及び、世界で行われる日本語学習の広がりへの貢献を鑑み、重要性の高い研究であると認識される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は2021年度に、研究推進のために調査を2回実施し、その結果を分析し反映することで、オンライン学習システム構築を行った。なお、調査は日本国内で、中級レベルの日本語学習者を対象に実施した。 オンライン学習システム構築のためには、学習者の学習過程において自主的・自律的な学習を円滑に進めるための支援が必要である。そのため、2021年度には、これまでの研究調査で学習者からの要望にあった「対のある自他動詞」「移動動詞」の事前学習ビデオを作成し、学習者はオンライン学習前に視聴した。事前に学習対象の紹介ビデオを視聴することで、学習者の不安要素が下がり、スムーズにオンライ学習に移行できたことが、学習者のアンケート回答から確認された。その後、これまでの項目を見直し、さらに文法を追加した1250項目を用意し、これらの項目を1日50項目学習者に提示するオンライン学習システムを構築した。事前のプレテスト・事後のポストテスト、また学習終了後の作文課題を課すことで、初級から上級レベルの対のある自他動詞を短時間で集中的に学習し、知識整理と知識獲得を行うオンライン学習システムの構築が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、構築したオンライン学習システムを用い本調査を実施する予定である。 まず、2022年度は日本国内外の日本語学習者及び日本語教師を対象に調査を実施し、学習者及び教師への情報提供を目指す。協力対象教育機関の所在はアメリカ・タイ・中国と多岐に渡り、多様な学習背景を持つ日本語学習者からのデータ収集が可能であると考えられる。学習者の取得データを指導教師へフィードバックすることで、その学習者の特徴と到達レベルを教師へ提供することも2022年度の目標の一つである。 次に、2023年度には2022年度で得た結果を基に、最終調整をした学習支援システムを本運用する予定である。2023年度は日本国内の学習者と教師を対象に調査を実施し、システムの評価を経て、学習支援システムの完成を目指す。 今後の社会情勢により協力対象教育機関が所在する国への訪問が厳しい場合、対象機関を変えるなどの対応を取りつつ、調査実施を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度への繰り越しは「1.予定していた調査参加人数が集まらず、謝礼が予定額に到達しなかった」「2.購入を予定していた書籍が購入できなかった」ためである。 以上の理由から次年度への繰り越しが生じたが、これらは2022年度の調査において、調査参加者の対象を広げる必要があるため、謝礼へとして使用する予定である。
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