2021・2022年度は、「文章・談話研究会」(代表:佐久間まゆみ早稲田大学名誉教授)が保有する人文科学系講義2編(講義G・H)の談話データ(各90分)に付された情報伝達の質と量を測定することを目的として設定された分析単位である「情報伝達単位(CU)」(佐久間まゆみ2006等)に基づき、3種の理解データ(①受講時のノート・②要約文・③受講後のインタビュー)にも、「情報伝達単位(CU)」の分類を付した。 これにより、講義の談話において講義者が表現した情報がどのようなかたちで受講者の理解に残存するのかを分析する下準備が整った。 2022・2023年度は、②要約文の分析から、日本人学生が講義G・Hを受講して理解した内容をどのようなかたちで表現するのか、その表現形式に特徴があるのかを分析していくことを検討した。さらに、留学生との比較を検討した。 講義G・Hの談話を対象に、Ⅰ.主題段(講義の中心的な内容の段)の情報のどの部分がどのようなかたちで要約文に表現されているか、Ⅱ.講義の談話に特徴的な話段(抽象的な分類について具体例を挙げながら説明をする話段)の情報がどのようなかたちで要約文に表現されているかを、情報伝達単位(CU)に基づき分析を行った。これまでの研究は、量的な研究方法が優先されていたが、今回は、個人の要約のし方を詳細に分析することを試みた。 Ⅰ.については、要約文の主題段の表現方法(出現位置・残存するCUの組み合わせ)は、講義の談話の理解のし方が異なることによる可能性があることを見出し、いくつかのパターンに分類できることがわかった。Ⅱ.については、日本人大学生と外国人留学生との間に差がみられることがわかった。文章・談話レベル(大話段と大文段、小話段と小文段)でのパラフレーズについての特徴が明らかになってきたため、論文化を目指したが、十分な検討ができず、それが果たせなかった。
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