研究課題/領域番号 |
21K00647
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
Boitsov Ivan 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00818271)
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研究分担者 |
臼山 利信 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50323225)
加藤 百合 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50326815)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロシア語教育 / 外国人ロシア語学習者 / 日本人ロシア語学習者 / 言語的誤り / 教材開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ロシア人と日本人のロシア語教育研究者が協力して、現代ロシア語を学 ぶ日本人学習者に見られる言語的誤りを体系的に検討・考察し、その上で日本人による典 型的な誤りを矯正するための教材を開発することである。 初年度は、国内外の先行研究を整理するとともに、考察対象となる文法項目に関するデータとして、筑波大学ロシア語初学者クラス(主に1年次)での小テストや学期末テストの記録、授業参観時の録画等を収集・蓄積し、言語資料として整理・分析を行った。その結果、多種多様な、1)文字レベルの書記法上の誤り、2)語レベルの正綴法・正書上法の誤り、3)語彙・文法上の誤り(a.動詞類の活用形及び名詞類の格変化形の誤り、b.語結合関係の統語法上の誤り)の存在が確認された。1)は、ロシア語と日本語の音韻体系の相違、2)は、主に正書法の規則、無アクセント母音字の発音規則、子音の同化の発音規則の理解度と習得度、3)は、語形変化及び語結合関係の習得度などに大きく起因しているものと推察される。日本語とロシア語の言語干渉は、1)と3)のタイプにおいて特に顕著に見られる。膠着語である日本語と屈折語であるロシア語の言語機能・構造上の隔たりは大きく、日本語にはない言語的特徴を数多く持つロシア語は、本質的に日本人学習者にとって言語的誤りを誘発しやすい言語だと言える。 ロシア語入門・初級の履修者の言語的誤りは、それを避けるために工夫を凝らし、適切に作成した練習問題を学習者に継続的に解かせることで縮減できることが明らかになった。また新型コロナウイルス感染拡大により、ロシア語の授業はすべて同時双方向型のオンライン授業となった為、対面の教育活動の形態とは大きく異なるが、スライド、映像、絵、写真等、ロシアの言語外現実を伝えるビジュアルな教育材を活用することで、ロシア語履修者の学習動機を一定の程度高められることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で対面授業ではなく、オンライン授業が続いている。オンデマンドではなく、同時双方向による授業を行なっているため、教育効果の低下もある程度抑えられている。そうした状況下で、ロシア語履修学生の習得過程について試験などを通じて把握し、分析・考察してきた。その結果を2本の論文として刊行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度も引き続き、日本人学習者特有の言語的誤りに関する実証的な研究を推進する。さらに、前年度の研究成果の一部を、改訂するロシア語教材のコンテンツに反映させる作業を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍における授業運営などにエフォートを大きく割かれる中で、対面での研究者交流や国際会議発表、国内研究学会発表ができなかったため。新型コロナウイルス感染拡大も収束の方向に向かっているので、オンサイトでの活動を積極的に行なっていく予定である。
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