研究課題/領域番号 |
21K00655
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
李 凱 獨協大学, 経済学部, 准教授 (10531543)
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研究分担者 |
中西 貴行 獨協大学, 経済学部, 教授 (10406019)
狩野 紀子 拓殖大学, 外国語学部, 教授 (40350574)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 遠隔学習 / e-ラーニング / ラーニングアナリスト / AI / 学習履歴 / 可視化 |
研究実績の概要 |
本研究は、オンライン英語学習のプロセスに着目し、学習活動のモデル化手法の開発、及び評価を行う。今年度では、各学習ページでの滞在時間に着目し、データの構造化とクラスタリングによる学習行動を分類・比較した。また各学習行動パターンの特徴に基づき、適応型学習支援手法を提案した。 具体的に、Manabaのログデータを三つの視点で活動の量、活動の時間、活動の頻度から43個の変数を抽出するプログラムを開発した。データ構造化した結果として、一人ずつの学習活動を新たに44列 (IDを含む)の学習特徴で表すことができた。 また。構造化した44個の変数に相関関係が高く、情報量が低い冗長変数が含まれているため、学習活動を三つの視点 (活動の量、活動の時間、活動の頻度) に縮約し、k-means手法で学習活動の類似度からクラスターリング分類ができた。 次に、分類・比較した結果、自己効力感が高い学生は脱落危険とドロップアウト学生より活動の量が有意に高いことが分かった。また活動の時間に関して、自己効力感が高い学生と努力する学生だけに有意差が見られるが、ほとんどの学生が各ページの滞在時間が短く、ほかのクラスター間に有意差が見られなかった。活動頻度に関して、自己効力感が高い学生は脱落危険とドロップアウト学生より活動の頻度が有意に高いことが分かった。各学習行動パターンの特徴に基づき、持続的な自律学習を支える適応型学習支援手法を提案した。 今年度で得られた関連研究成果をEDULEARN とInternational Conference on Cognition and Exploratory Learning in Digital Age国際学会で発表した。次年度は、改良をふまえ、開発した学習行動パターン分類法及び適応型学習支援手法を用いて実証実験を行う。提案手法の信頼性・妥当性を検証・評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画は持続的な自律学習を支える適応型学習支援手法の開発及び予備実験の実施を行う。計画通りに、開発した予測モデルを用いて、学習者のオンライン学習活動を43種類に抽出でき、また三つの視点(活動の量、活動の時間、活動の頻度)でオンライン学習活動をモデル化・分類できた。そして、個々のグループに応じた適切な学習支援手法を提案した。 結果として、学習活動を43種類に抽出した結果、各学習ページへのアクセス数、時間、頻度を把握でき、個々の学習パターンを把握できる。全体的にコメントやスレッドのアクセス数が少なく、学生と学生、学生と教員間のインタラクションが少ないことが分かった。またレポートリストへのアクセス数が多く、レポート完成が目的でオンライン授業を受けていることが分かった。 クラスタリング分析した結果、4種類の類似したグループの学習パターンに分類できた。例えば、自己効力感が高い学生の学習頻度が高く、学習時間が短く、学習の量が多いことから、公開した講義内容の難易度と量を予測でき、その以上の参考資料やグループディスカッションの機会を提供すべきと考えられる。また脱落危険とドロップアウト学生の活動の量が少なく、学習時間が長く、頻度が低いことから、即時な学習支援、質疑応答の機会を提供する必要がある。 本研究は従来のレポートやテストによる総括的評価ではなく、三つの視点で学習活動の量・時間・頻度により学習プロセスを総合的な学習評価が可能になる。またManabaのログデータの基本構造は他のLMSのログデータと同様であるため、本研究のデータ構造化・クラスターリング手法を利用し、他のLMSにおける学習活動分析にも同様に対応することが可能である。以上の成果を関連する国際学会にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、オンライン英語学習のプロセスに着目し、学習活動のモデル化手法の開発、及び評価の多様化、諸学習活動の可視化を支援するe-ラーニングAIアナリストシステムの開発と実践を目的とする。初年度では自動的にManabaから学習履歴ログデータを取得できるプログラムを開発した。次年度ではRetentioneeringライブラリーを利用し、各ページ間での遷移確率を算出し、学習行動の遷移をモデル化・可視化した。今年度では、各学習ページでの滞在時間に着目し、データの構造化とクラスタリングによる学生の学習行動パターンを分類・比較した。また各学習行動パターンの特徴に基づき、持続的な自律学習を支える適応型学習支援手法を提案した。 最終年度では、改良をふまえ、開発した学習活動のモデル化と評価手法を用いて実証実験を行う。予測した学習パターンと評価結果を用いて、英語学習の4技能、学習到達目標CAN-DOリストの関係を量的に評価する予定である。実証実験で得られた研究結果を国内外の論文誌・学会で発表すると共に、システムをモジュール化・オープン化することにより、教育現場での活用・普及を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に研究代表者が一年間海外に学外研修したため、国際学会での渡航費が予定より少なかった。また購入する予定の解析用パソコンが海外が高額のため、次年度に日本で購入する予定である。以上の理由で生じた残額と請求分を合わせて次年度に利用する予定である。 次年度にデータ解析、データのモデル化するため、解析用STATAという専用ソフトウェアが必要となる。実証実験に収集された学習履歴ログデータ、アンケート調査などデータ保存用NASなど備品を必要とする。また、本研究は研究代表者及び各分野専門とする研究分担者計3名で研究体制をとる。実験協力者への謝金、研究成果発表のための国内国外の渡航旅費、及び研究成果を学術雑誌に掲載するための投稿料、英語校閲の費用を計上している。本研究課題を効率よく円滑に進めるにあたって、上述の謝金、旅費は次年度に必要なものである。
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