研究課題/領域番号 |
21K00658
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
山本 綾 昭和女子大学, 国際学部, 准教授 (10376999)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 英語 / 日本語 / 評価 / 会話 / 相互行為 |
研究実績の概要 |
私たちは会話のなかで、物・出来事や人物などについて、「おもしろいね」「つまらないよ」のように評価(assessment)を述べ合うことがある。本研究課題では、日本語母語話者と英語母語話者の会話を資料として、話し手がどのように評価を述べるのか、評価をめぐって聞き手とどのような相互行為を展開しているのかについて、談話分析と会話分析の方法・概念を用いて探る。その取り組みを通して、日本語母語話者の英語コミュニケーションの場におけるふるまいの一端を実証的に明らかにし、英語教育の実践に貢献することを目指す。 2021年度は、新たな会話資料の収集は見送り、これまでに収集しデータベース化した会話資料を用いて分析を行った。分析の結果は、オンラインにて開催された国際学会において口頭発表した。 発表では、日本語母語話者2名または3名と英語母語話者1名からなる小集団対面会話(4組)に基づき、日本語・英語間のコードスイッチングが生じた箇所に着目し、やりとりを質的に検討した。その結果、日本語母語話者が英語から日本語にコードスイッチングする場面の一つとして、評価を伝える場面があることを明らかにした。(例.英語母語話者がスマートフォンを取り出して、保存されている画像を提示したところ、それを見た日本語母語話者が「いいね」「大人っぽいね」と述べる)。こうした評価発話は、宛先に英語母語話者を含まず、日本語母語話者の間のみで手短に交わされ、その後は速やかに英語へとコードスイッチングされる。 以上、本研究課題の初年度は、英語会話の途中で日本語による評価発話が断片的に挿入される現象を取り出し、その模様について詳細に記述した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画当初より、初年度は新たな会話資料を収集するための準備期間と位置づけていた。2022年度内の収集開始を目指しているが、具体的な時期と方法を2021年度のうちに確定するには至らなかった。 また、緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置の発令により、大学の授業や勤務の形態にたびたび変更が生じた。そのため、研究室から持ち出すことができないデータベースや文献を閲覧したり機器などを利用したりし難い時期があった。収集済みの会話資料を活用することにより一定の分析と報告はできたものの、まだ十分に検討できていない観点も残っている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は引き続き、既に収集・データベース化した会話資料を用いて量的・質的分析を行う。分析の観点としては、評価発話の形式的特徴、会話参加者どうしの協調や価値判断の方向づけに関わるふるまいが挙げられる。また、2022年度に所属機関を異動した。新たな所属機関の諸規定や手続きを確認し、会話資料の収集再開に向けて準備と調整を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、 2021年度はほとんどの学会がオンライン開催あるいは開催延期となったことが挙げられる。旅費の支出が、当初計上した予算を大幅に下回った。また、世界的な半導体の不足や物流網の混乱の影響もある。入荷時期が未定のため購入を見送った備品や消耗品があり、物品費に残額が生じた。 未使用額は、(1)収集済み会話資料の保管が長期間にわたるため、その保守・管理のための費用、(2)録音・録画機器の保守・管理と更新にかかる費用に充当する。
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