研究課題/領域番号 |
21K00662
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
太田 達也 南山大学, 外国語学部, 教授 (50317286)
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研究分担者 |
草本 晶 麗澤大学, 外国語学部, 准教授 (60337722)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ドイツ語教育 / 教師養成・教師研修 / 民主的シティズンシップ / 内容言語統合型学習(CLIL) |
研究実績の概要 |
本研究は、民主的シティズンシップの育成の場としての言語教育といった広い視点を持ちつつ、内容言語統合型を始めとする新しいコンセプトに基づく授業を実践できるプロフェッショナリティーを備えたドイツ語教員をいかに養成・研修するべきかという問いを追究するものである。2021年度は「ドイツ語教員養成・研修講座」の元受講生を対象としたインタビューを実施し、講座参加がアイデンティティの形成・変容にどのような影響をもたらしたのかを調査した。その結果、研究者でありドイツ語教師であるという二重のアイデンティティに基づく葛藤の有無とその度合いは専門や人によりさまざまだが、教育と研究の接点を見出すことでアイデンティティを調整し葛藤の解消を試みたり、職業的モチベーションの維持・向上を意識的に行ったりしていること、講座中のリフレクションの機会と講座参加後の授業実践が自身のビリーフの相対化や「あとからの気づき」につながっていることなどが明らかになった。また、教員養成・研修にあたっては、「参加者中心」(参加者の置かれた環境や抱える問題を出発点とし、自分はどうしたいかを考える活動を中心に据える)、「結果に対しオープンであること」(参加者を特定の方向にではなくリフレクションへと導く)、「個人特性の重視」(参加者の個性や経歴を考慮し、ありのまま受け入れる)が重要であるとの帰結が導き出された。これについては国際ゲルマニスト会議にてドイツ語で発表し、日本語論文を執筆・刊行した。 また、日本語教育などの先行研究を調査したうえで大学におけるドイツ語教育の目標について考察し、単なるコミュニケーション能力の育成を越えて「平和的な共生社会の構築に寄与する人を育てる」ことを念頭に置いたドイツ語教育を考えるべきである、とする論考をまとめ、GETVICO24においてドイツ語で発表し、日本語で小論を執筆・刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2021年度は主に「民主的シティズンシップの育成に従事する教員の養成・研修は国内外でどのように行われているのか」「初級段階から内容言語統合型の外国語授業を実践している教員は、その効果と問題点をどのように認識しているのか」「教員養成・教員研修において、研究者としてのアイデンティティーとドイツ語教員としてのアイデンティティーの間の隔たりや葛藤がどのようなかたちで現れ、どのようにしてそれが克服されるのか」の3点について、国内・海外での現地調査および文献調査を行う予定であったが、コロナウイルス感染拡大状況が予想していたほどは好転せず、計画の一部を翌年度に延期せざるを得なかった。しかしながら、教員養成・研修講座の元受講生を対象としたインタビュー調査の実施・分析は順調に行うことができ、かつその結果についても、国際的な場で発表し、かつ日本語での刊行物も2点出版することができた。したがって全体としては、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で研究対象とするのは、国内外における英語以外の外国語教育のうち相互文化的アプローチ・内容言語統合型学習を実践している授業とその教員・学習者、および国内外における英語以外の外国語教員の養成講座・研修講座とその講師・参加者である。2022年度以降は、リサーチ・アシスタントを雇用し、文献収集・文献調査を進めつつ、2021年度に実施できなかった項目についての現地調査を行う。また、「内容言語統合型の外国語授業を実践する教員の養成・研修は国内外でどのように行われているのか」「教員養成・研修担当者は、内容言語統合型の外国語授業において教員にはどのような力が求められると認識しているのか」「教員養成・教員研修において、自分のこれまでの教授法に対するビリーフと新たな知見との衝突が参加者によってどのように認識され、そこからどのようにして「第三の知」が生成されるのか」という問いについても、現地調査・インタビュー調査・アンケート調査を実施し、データの分析を行う。国内において先進的な外国語教育を実践している大学については、すでに現地調査の実施計画が具体化しつつある。民主的シティズンシップを念頭に置いた外国語授業を実践しているドイツ語圏の教育機関についても、現地調査の準備を進める。また、アイデンティティの育成に着目したドイツ語教員養成・研修のあり方をめぐる研究については、2022年8月にウィーンで開催される国際ドイツ語教師学会(IDT)において登壇を予定しているほか、研究分担者・協力者と共著でドイツ語論文を執筆する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、コロナウイルス感染拡大のため、国内および海外における現地調査を行うことができなかった。また、国際学会もオンラインで参加したため、旅費が発生しなかった。これら2021年度にできなかった現地調査および国際学会参加は、2022年度以降に行うこととする。
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