研究課題/領域番号 |
21K00663
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
青谷 法子 東海学園大学, 教育学部, 教授 (00278409)
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研究分担者 |
高橋 晋也 東海学園大学, 心理学部, 教授 (70260586)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心的語彙ネットワーク / 多読処理水準 / タスク / 関与負荷 / 日本人英語学習者 |
研究実績の概要 |
多読タスクに起因する関与負荷(involvement load)、特にevaluationとneedが、EFL学習者が知覚する語彙関係の変化に及ぼす影響について実験的調査を行った。52名の日本人大学生を3グループにランダムに割り振った。すべてのグループに同じリーディング教材(12個のターゲット単語を含む319語の英文)が与えられたが、タスクは異なるものであった。MCQグループは、パッセージの内容に関する多肢選択式の質問に答えた。MCQ+FBグループは、MCQに加えパッセージの穴埋め問題に答えた。MCQ+Comグループは、MCQに加えターゲット単語を使った作文課題を行った。タスクの1週間前、タスク直後、タスクの1ヶ月後の3回、参加者全員が対象語間の関係性を判定し、その平均値を語彙ネットワークの深化度を示す指標とした。また、参加者はタスクに対する内発的動機付けを問う質問にも回答した。その結果、仮説に反して、タスクによって操作されたevaluationも、参加者の内発的動機づけの程度によって比較されたneedも、語彙ネットワークの深化に有意な影響を与えないことが示された。次に、要素間の非対称な関係を2次元マップ上に可視化する統計モデルであるAMISESCALを用いてデータを分析したところ、対象語間の関係は主対象語(パッセージのキーワード)に大きく依存することが分かった。今回の結果は、Involvement Load Hypothesis (Laufer & Hulstijn, 2001)の観点からは概ね否定的なものであったが、今後の研究においては、目標語を含む適切な多読素材を慎重に選択することが重要であることが示唆された。なお、この研究成果は本年6月開催の国際学会(END 2022)でオンライン発表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画においては令和3年度~令和4年度前半までで、Involvement Load Hypothesis (ILH)およびTechnique Feature Analysis (TFA; Nation & Webb, 2011)のフレームワークを援用することで、様々な既存タスクを関与負荷の程度により分類し、それらを多読活動と組み合わせながら既習語の語彙ネットワーク構造の深化・拡張についての効果測定実験を行うとしていたが、令和3年度末において実験は1回しか実施できていない。当初は対面による実験を行う予定であったが、新型コロナウイルスの蔓延状況により遠隔での実施を余儀なくされ、実施方法や期間が限定されてしまったことが一因である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究成果により、多読素材と目標語選択の適切さが実験計画立案において重要であることが明らかになった。今年度はその課題に取り組みながら、引き続き、1) ILHおよびTFAのフレームワークを援用し、タスク、多読教材および実験参加者の特性の組み合わせを変えた効果測定実験を繰り返し、データを精緻化していく。さらに、2) 分析結果からこれらのフレームワーク自体の有効性について検証を行う。そして、3) 精緻化されたデータをもとに、語彙ネットワーク構築を促進する構成要素を組み合わせた新しいタスクのデザインを行い、さらに効果測定実験により検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度には複数回にわたって実験を行う計画であったが、1回しか実施できなかった。当初は対面での実験を行う予定であったが、新型コロナウイルスの蔓延状況により遠隔での実施を余儀なくされ、実施方法や期間が限定されてしまったことが一因である。今年度は、実験計画を見直し、昨年度未使用額を使用して研究の遅延を取り戻す予定である。
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